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 校内を巡回中、学人脳内では先程の事が渦巻いていた。

(付けるな…か。よほど似合ってなかったんだろうな)
 付けろと言った本人に付けるなと言われる自分て一体…

 あまり顔に出る性質ではないから、端から見ればキリッとした姿で役員としての役目を果たしているように見えるのだが、思った以上に落ち込んでいる学人である。

 似合わないのは自分でも承知していたが、そこまで駄目出しされるとは思わなかったのだ。

(笑いの種くらいにはなると思ったんだけど…)

 真面目で堅い印象の自分が可笑しな格好をしたところで怖いだけかもしれない。と学人はマイナス思考になっていた。



「学人? どうしたの、ぼーっとして」
 一緒に回っていた書記の榎原幹也(エノハラ ミキヤ)に声を掛けられて、はっと意識を戻す。
「……少し考え事してただけだ」
 学人は自分が全くと言っていい程周りを見ていなかったことに気がついた。これでは何の為の巡回だか知れたものでない。
 気を引き締め直して辺りの様子を伺う。

「そう。ならいいんだけど」
 そう言って幹也は首を傾げる。
 その姿は愛らしく、今着ているメイドの扮装によく合っていた。

 幹也は学園でも名の知れた美少年だ。
 女の子に間違えられる事も少なくない容姿の彼は、メイド服を着ていてもあまり違和感を感じない。

(これくらい可愛かったら、アレも似合うんだろうな)

 もし自分が彼の様に愛らしい容姿をしていたなら、会長も駄目出しなどしなかっただろうか。

 無いものを求めたところで仕方がないのは解っているが、つい学人はそう思ってしまう。


 もし自分が幹也のように可愛いらしかったら、会長を想う事も、許される気がするから。

  

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あきゅろす。
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