2 「はぁ…」 ため息をついて鏡に写る自分の姿を見る。 気が乗らない。 「なんでこんな物…」 鏡に写る自分の頭部にはフサフサの――ネコミミ。 時は少し遡って、生徒会室。 「なんですか? これは」 手渡された物を見て、不快感を露に舘野学人(タテノマナト)は目の前の人物に問う。 「見ての通りネコさんセット♪」 「"ネコさんセット♪"じゃありませんよ。これを俺にどうしろと?」 「モチロン付けるんですよ。舘野副会長。あ、因みに拒否権ないから、ね?」 会長命令だよ。と言ってよこすのはこの櫻城学園の生徒会長である結城(ユウキ)だ。 「冗談じゃありません。俺が何故こんな物を付けなくてはならないんですか」 「何故って、生徒会の文化祭企画がコスプレ喫茶だからに決まってるでしょ?」 「私は裏・方・担・当なのですが」 『裏方』を強調してみるが、会長は聞く耳を持たないらしい。 「ダメダメ、副会長っていったら会長のコンビなんだから。オレと一緒に表で目立って貰わなきゃだよ」 そんな勝手な。 「目立ちたくないから裏方なのに」 もう一度大きくため息をつく。 今は生徒会室にある別室。 仕方なく頭にカチューシャ状になっているミミを付けたが。 「――似合わな…」 似合うのもどうかと思うが。 「この眼鏡がいけないんだろうか」 地味で真面目な性格を、そのまま形にした様な容姿を見て学人は呟く。 「まぁ、さっきよりはましか」 眼鏡を取ると、幾分ましになったように思える。 『ガラッ』 「ま〜なとくん。ま……だ…」 鏡に映る異様な傾向に我ながら辟易している学人が振り返ると、隣室から会長が顔を出した。 「つ、付けましたが」 「………」 会長は入って来るなりじっと学人を見たまま固まっていた。 「会長?」 不思議に思って呼びかけると、我に返ったように返す。 「学人(マナト)……」 「はい」 突然真剣な顔になるから、学人は思わず居住まいを正してしまった。 「………やっぱり付けなくていい」 「え?」 「ミミ、付けちゃダメ」 「それは…」 付けるな。と。 ほんの少し、胸のあたりにもやもやしたものを感じた。 ←*#→ |