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温度差。
セフレ
 
 慧とボクとはいわゆる『セフレ』という関係だった。

 向こうには彼女もいたし、ボクにも片思いの人がいた。


 まぁ、ボクは去年の秋にきっぱり諦めちゃったんだけど。




「ここでいいよ」
 終わったあと車で寮の近くまで送ってもらった。

 いつもなら、ここでさよならするんだけど、


「…もう少し時間ねぇ?」
 今日は慧に引止められた。


「無理。門限あるから」
「冷てぇの」
「バイバイ」
「幹也!」

 背を向けて歩き出そうとすると、慧が不機嫌そうに声を荒げた。

 ボクは溜め息をつく。


 最近ボクは、慧といても前みたいに楽しい気分にはなれなくなっていた。



 慧も本当は気付いてるんでしょ?


 ボク達の関係が、もう終わりなんだって。



 少なくとも、ボクの慧への態度の変化には気付いてるんじゃないかな。とは思うのに。



「慧……あのさ――」
「幹也?」
 そこへ突然声を掛けられた。
「学人……」
 そこにいたのは、ボクの高校の生徒会長である舘野 学人(タテノ マナト)――ボクの好きだった人だ。


 
「珍しいね。こんな時間に外にいるなんて。もうすぐ点呼の時間だよ?」

「や、少し買い物に…」

 学人はそう言ったけど、本当は恋人と逢ってたという事がバレバレだった。


「そ?」
「そ、そっちは―――あ」
 ボクがクスクス笑ってるのが気に食わなかったのか、照れ隠しする様にこっちの様子を探ろうとして、車にいる慧に気付いた。


「慧?」

 慧はなんだかとても不機嫌そうな顔をしていた。

「タテノマナト……だっけ?」
「…はい」
 学人は心なしか怯んだように返事をする。


 何? なんで慧、そんな怒ってんの?


「幹也はちょっと用があるから、今日の点呼適当に誤魔化しといて」
「は? 何用って、――ちょっ!」
 腕を掴まれて、無理矢理車に乗せられた。

 そのまま走り出して…


 一体何!?

***

 

「け、慧…ドコ行くの?」
「俺ん家」


 素っ気無く応えて、慧は黙々と車を走らせる。

「へ? 俺ん家って……慧の部屋ってこと!?」
 そう。と慧は頷く。


「な、何それ。――お、降ろしてよ。ボク帰る」
「いいから黙って乗ってろ」
「………」


 どうしたんだろう。
 慧がこんな風にイライラしてるの、はじめてだ。


 本当にどうしちゃったの?

    
   

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あきゅろす。
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