novel
野良猫2
プカーっと煙が部屋に充満するのを見てシオンは眉間に皺を寄せた。
「煙たい」
「なら出て行け」
あっさりと言ったスモーカーにやれやれとシオンは首を振った。
「だから、嵐が来るって言ったよね?気楽に泊まれるトコって此処しかないんだよね」
山となった書類の間でシオンは器用に丸くなって眠り始めた。
「邪魔するなら出て行け」
「嫌だよ」
そう言ってシオンが大人しくなったのを見て、スモーカーは一人石を積み始めた。
「スモーカー大佐!大変です!」
バン、とドアを開けたせいで石はガラガラと崩れ落ちた。
その音を耳にしてシオンも起き上がり軍曹を見た。スモーカーに睨まれて汗を掻いているのを見て楽しそうに笑っている。
「あーあ、今にも死にそうな顔してるよ。これもスモーカーの凶悪面のせいだね」
「うるせぇぞシオン!!」
「あれ、気にしていたかい?」
ニヤニヤと笑うシオンは無視する事にしてスモーカーは軍曹との話を進める。が、話しながら歩いていたのが悪かったのか、小さな子供がぶつかってしまった。
「前方不注意だね」
「黙れ…悪ィな。おれのズボンがアイス食っちまった。次ァ五段を買うといい」
子供に優しいスモーカーを見て、シオンは似合わないねえと笑った。
「…なんでテメェは付いて来るんだ」
「暇潰し?」
ニィ、と口元を笑みの形にした猫を見て、スモーカーはどうでもよさそうに勝手にしろと呟いた。シオンは、うん勝手にすると返してスモーカーの肩に飛び乗った。
「あァ?下りろシオン」
「いいじゃないか。…それにしても子猫の頃からそう大きくならなくて良かったよ。これなら人の肩に乗り易いからね」
「…………………化け猫が」
「なんとでも」
しれっと言い返して、シオンは楽しそうに尻尾を揺らした。
end
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