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結局30分もかけて食べてしまった。
久しぶりに食べた兄さんの料理がそこらの店よりも美味しいせいだ。
今度こそ玄関に向かおうと立つと、兄さんがエプロンを外していた。


「車、近くに停めてるから送ってく」


「え、」


車のキーを取り出して何でもないことのように言った言葉に思わず声が洩れた。


「何だその顔」


「だって兄さんが優しい……!」


「ほう、俺がいつもは優しくないと」


「そういう事じゃない、けど!」


もにょもにょと口ごもって足下に視線を移す。
兄さんが小さく笑ったような気がした。


「ほら、行くぞ」


「わ、」


突然暗くなった視界に慌てて手をさまよわせると、その正体は黒いカーディガンだった。
俺のじゃなくて、多分兄さんの。


「寒いから着とけ」


「あ、ありがと」


お礼の言葉を口にすると、既に玄関の扉は閉まるところだった。
急いでカーディガンに袖を通して靴を引っ掛けた。







まだつづく。

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