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恐い程度です。

「ん…」

ぴちゃりと頬を辿る生暖かいモノに意識が覚醒し始める。

「やっと起きた?何時までも起きないからちょっと悪戯しちゃったよ。」

少し舌を出し、気色悪く笑い、気色悪い声が直接耳に響く、それと共に生暖かい舌で舐められた。
何時までも気持ち悪い舌でベロベロと舐めるので殴って罵声を浴びせようと体を動かす。

「……ーーッ!ーーッ!?」

そこで気が付く、体は戒められ、口に何か埋められてうめき声しか出せない。

「あぁ、逃げられても叫び声を上げられても困るからね。ちょっと拘束させて貰ったよ」

「ーーッ!!」

この糞変態キチガイ野郎が!
私は体を縦横無尽に動かし、引っ張り、引っ掻き、暴れた。
そんな抵抗をキチガイはクスリと笑い、私の背中に勢い良く座った。肺の空気が一気に出ていき、圧迫される。腹への負担がかかり、息が詰まり苦しくなる。

「それより見てよ。君の父親を」

グイッと髪の毛を鷲掴みにされ、無理矢理顔を上げさせられる。

「ーーーー…。」

お父…さん?
椅子に浅く座り、四肢をだらしなく垂らし、泡を口から零し、白目を剥いている。その紛れもない汚れきった肢体は、その腐れ切った肢体は、その腐臭しきった肢体は、紛れもなく疑いようもなく目を逸らす否定も必要なく。
彼。彼氏であった。夫。夫であった。父親、父親だった。

「………ーーーーー。」

歯がガチガチと鳴るのが止まらない、瞼が限界まで開き、瞳がさ迷うのが止まらない、全身が水打ったように振るえるのが止まらない、止められない、止める術が分からなくなってる。
朝いつも憎悪に満ちる背中を見せていたじゃないか、心臓が痛む愛を嘯いていたじゃないか、柔らかい声で出掛けていたじゃないか。
なのに何だこの有様は。この弛緩しきった肢体の死体のような人は、生きている様には到底見えない。

「あはは、吃驚してくれた。漸くね準備が揃ってね。本当はあの日に実行しようかと思ってたんだけどね。邪魔が入ったから仕方無く今日にしたんだよ。アイツ本当ムカつくよね。でね、君の喜ぶ顔が見たかったから君の父親にちょっと悪戯したんだぁ。あ、大丈夫。まだ殺してないから、ほら」

そう言い、まるで気軽に握手するかのような親しさで、なんとはなしに父親の中指を逆方向へと曲げた。

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あきゅろす。
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