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「五月蝿い!彼女は僕のだ!!僕のものなんだ!!お前のものじゃない!!僕のなんだよ!この糞野郎!!!がっ…!」

俺は間髪入れずに、男の腕を鉄パイプで殴った。

「俺は命令をしたんだ、別に聞かなくても良いですけどね」

続けて反対側の腕に一発、強すぎた気がするが、気にしない。

「どうですか?言う事聞きますか?死ぬまで殴っても良いんですよ。」

「ぐ…がぁ、ぁ……ああがぁああ!!」

「そうですか、じゃあ頑張って下さい」

相手の返事を元々聞くつもりも無かったので、あの後殴り続け、案外あっさりと男は気絶をした。
情けなさ過ぎて、それ以上はやる気が出なかった。
俺は、彼女の元に戻った。
彼女はまだ気絶していたので、背負って廃墟の外に出た。
…軽い。
外の方が幾分か空気が良くて、丁度いい段差の所に膝枕をして横たわらせた。
家も知らないし、流石にずっとおぶって行くのも無理。
例えさっきの男の意識が戻っても、大丈夫だろう。
例え来ても、返り討ちの際にまた一本折っておこう。

「……」

にしても、何で変人にモテるかねぇ…この娘。
退治するこっちの身にもなって欲しい。
まだ眉間に皺を寄せているこの娘の皺を摘む。

「………むぅ、寝ている人にする事では無い」

起きてたのか

「……狸だねぇ」

「お前は狐だけどね」

「相も変わらず冷たいですよ、もっと優しく出来ないの?」

呆れた顔をされて、不意に狸な娘が片腕で目を隠す。

「……どうして居るんだ」

懺悔のような言葉、多分この気持ちは感づかれてる。
俺も感づかれてるのは気付いてるけど、言わない。

「姫を助けに」

「……奴はどうした」

「勇者の様に倒しました」

「此処は何処だ」

「魔王の廃墟です」

「暗い」

「夜中ですから」

「どうして…居るんだ」

「…二回も訊くか」

彼女は沈黙した、言うしかないか。

「……助けに」

長い沈黙の後、チラリと顔を見られた。

「…何故」

「そりゃ、俺以外に殺されたら堪らないから」

彼女は軽く笑い、言った。

「…死ぬつもりは無かったよ」

「嘘だな」

分かりきった事だな。

「うん」

事も無げな言葉、所詮は遊び言葉。

「…なぁ、君は私をもう一度殺そうとは思わないのか」

勿論「殺したいよ。でも失敗したからもういいや、それに…」

これは他人に映すものじゃない事が分かったから。

「?…そうか」

「にしてもさぁ…、痛そうだぞ」

俺は目を隠している片腕を掴んで、切られている所の血をヂュと吸った。

「なっ!!何をする。」

強引に腕をはねのけられてしまった。


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あきゅろす。
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