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専属-2
「きょーくん、熱心だねー」
「京は真面目だから。締切まであと3週間はあるのに」
「まーくんは真面目?」
「俺は、彼方先輩にだけは真面目です」
「嬉しいなあ……ね、キスして」
「はい」

「あんたら、乳繰り合うだけなら出て行ってくれます!!!?」

外は炎天下。冷房が入っているものの、あまり効力を発揮していない生徒会室内。
オレ、林原京(はやしばらきょう)は書類の整理と闘っていた、孤独に。
目の前にいる二人が、ついにキスをしようとした瞬間、オレの堪忍袋の緒が切れた。

ソファに寝そべるようにして座っている親友の麻美正敏(あさみまさとし)の身体に、木村彼方(きむらかなた)先輩がその小柄な身を寄せている。
いかにも日本男児と言った雰囲気の正敏と、フランス人形のように可愛らしい容姿をしている彼方先輩とは、一見アンバランスのように見えるのに、寄り添っていると不思議と絵になる二人だ。専属関係を結んで早3か月、見事に恋人同士になっていた。
二人はオレの怒鳴り声にきょとんした顔で、こちらに視線を向けた。

オレは手元にある書類を机に叩きつける。ダンッと紙のまとまった重い音がただでさえ暑苦しい部屋の中で響いた。

「きょーくん、乳繰り合うって死語だと思うよー」
「あまり使わないな」

二人で首を傾げつつ、顔を見合わせる。
ダメだ。効果ない。

「会話はまだ我慢しますけど、キスはやめてください」

「ええーっ、横暴だー」「俺達の恋路を邪魔する気か」

「あんたたちがオレの作業の邪魔をしてるんですよ!!」

目の前にあるのは、五十音順に名寄せをしなければいけない書類の束だ。数えたくないけど、単位は千だと思う。これを見ているだけでも気が遠くなってくる。全て、生徒会で処理しなければいけない書類だ。強制的に書記兼雑用として指名されてしまったオレの仕事でもある。提出までまだ時間はあると言っても、早く片付けてしまいたい。ちなみに目の前にいる彼方先輩が副会長で、正敏が会計だ。
一人仕事がたまっているオレの横で、助け舟をだすこともなくこの二人はイチャついていたのだった。

「京は貴紀先輩が来ないせいで機嫌が悪いんだと思う」
「そかそかー、たっくんは今センセーとのお話最中だから、もう少し待ってないとね。だからイライラなのかー」

聞こえるように話しているのはわざとだろうか。
実力行使をしようか考えているところで、生徒会室のドアが勢いよく開かれた。

「あっちぃー。灼熱だよ、廊下。暑い暑い。でも、あんまり中も変わらないー」

この生徒会室の主、生徒会長である下和田貴紀(しもわだたかのり)が手を団扇代わりに仰ぎつつ、中に飛び込んでくる。
そしてそのまま一直線にオレのほうへと向かってきた。

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あきゅろす。
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