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行ける高校があるか分からないと言われていた明人だったが、俺の説得と明人自身の力で目出度く高校入学を果たしたのが3ヶ月前のこと。少し遠方の私立男子高校ということもあって、俺と明人しか地元の中学からは進まなかった。
そのおかげか、以前の明人の評判を知っているものはほとんどいないだろう。
居たとしても、今の明人と同一人物だと気づくものは少ないはずだ。

というのも、明人は高校の入ると別人のように装い始めた。おとなしく可憐に微笑んでいる明人を見ると薄ら寒いものを覚えたが、それでも怖がられるよりマシだろうとそっとしておいた。俺以外の友達を作っている明人の姿を見るのは少し寂しくもあり、でも雛鳥の巣だちを見ているようで嬉しくもあったのだ。そうして中学時代より少し距離をおくこと3ヶ月。
今では立派にアイドル化されている明人は、南中の佐伯明人とは同姓同名の別人としか見えないだろう。

「明人……いつもの口調でいいから。怖いから。俺の前ではネコかぶるのはよしてくれよ……」

普段の明人を知ってるだけに、面と向かってこの口調で話されると鳥肌が立ってくる。

「そう?」

小首をかしげ、上目遣いで俺を見る。わかっててやってるな、この確信犯!

朝から一緒の登校は避けようと、俺はこうしていつもより早く家を出たのに見つかってるし、なんだか泣きたくなってきた。慣れない早起きしたのに、どうして見つかってんだ!?

「昨日ようちゃんの部屋の消灯が珍しく9時過ぎに消えてたからね。いつもは日付が変わるまで起きてるようちゃんが、9時に寝るなんて、それこそ朝早く起きる理由があると思うでしょ?」

俺の思ってることを見破ったのか、にやにやと明人が理由を並べる。
俺の部屋と明人の部屋は隣の家ながら向かい合わせにある。それこそやる気になったら窓で行き来ができる近さだ。
昨日から何もかもお見通しだったってことか…。

「ても、ま、こうして話してるのも疲れちゃうからなぁ」

一瞬。
一瞬だが明人を取り巻く空気が変わった。

「なぁ、要一、お前俺の物になれよ。いい加減ウザイ駄々こねてるとここでヤるぞ」

ばんっ。

鈍い音を立てて、明人の右手がドアを叩く。
さっきまでの甘えた口調はそこに存在しない。

出た。

出たよ、ついに出た。南中のブラックタイガー佐伯。キレたら誰にも止められない。
こうなった明人には殆ど太刀打ちできない。
なんつーか、オーラが怖い。見てくれは俺より細くて華奢で…それこそ女みたいな感じなのに、全身から迸るオーラは恐怖感を煽る。実際腕も立つから武者震いのようなものだ。

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あきゅろす。
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