9 恋はするものじゃない。気が付いたら落ちてるものなんだって誰かが言ってた。 俺の答えはとっくに出てたんだと思う。あの笑顔が好きだなって思った瞬間には、きっと。 11月になり、店も無事オープンして、俺は学校からバイト先に直行する生活が続いている。 まだまだ新人で失敗することも多いけど、どれも俺を成長させてくれる貴重な経験ばかりだ。 宇佐とは相変わらず趣味も合わなくて、喧嘩もしまくりで、だけど一度気付いてしまうと、宇佐はいつだって全身で俺が好きって伝えてた。 そんな宇佐が可愛くて仕方ないって言ったら、どんな表情を見せるんだろう。 「宇佐。この間の返事、今伝えていい?」 バイト帰り。いつものように二人で帰る途中。 そう話すと宇佐が不安げに俺を見つめた。 【王様】のこんな顔を知ってるのは、多分俺だけだ。 もっともっと俺の前で色んな表情を見せてほしい。 でも、今は。 ――まずは、俺が好きになったとびきりの笑顔を見たい。 そう思って、俺は自分の想いを告げるために口を開いた。 end. [*前へ][次へ#] [戻る] |