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 着いてくと言ってくれたみっちゃんか  らは気持ちだけ受け取る。

 保健室くらい一人で行けるし、取りあ  えずみっちゃんに迷惑がかかると思っ  て断ったのだ。

 俺は騒がしい教室を後にする。

 保健室のある棟は教室がないから比較  的静かだ。時々サボりの方々と擦れ違  ったりはするけれど。

 保健室の白いドアをノックするが返事  がない。

 俺は保健医が居ないと判断して、勝手  に入らせてもらうことにした。

 静かな室内。
 やっぱり中には誰も居ないらしい。

 取りあえずガーゼとか消毒とかを借り  ようと薬品棚を覗いた。

 探すのに夢中になっていた俺は、人の  気配に気付かなかったらしい。

 『勝手に薬品棚いじらないでくれない  、一年』

 少しきつめのその声に、俺は思わず肩  を跳ねさせて驚いてしまった。

 そっと声がした方を振り向く。

 俺から少し離れた所で、一人の生徒が  壁に寄りかかって立っていた。

 その先輩は、何故かワイシャツ一枚を  ペロリと羽織っただけのイケナイ格好  をしている。

 日の下に出たことのないような、透き  通るように白い肌。

 毛先が鎖骨辺りまで伸びた、少し長め  の艶やかな黒髪。

 長い睫毛に縁取られた、潤んだ黒目が  ちの瞳。

 こんな綺麗な人は初めて見たと思った  。

 街を歩く女の子より、テレビの中の女  優より、どこの誰よりも綺麗だ。

 『長谷なら今出てるよ』

 先輩はそう言いながら俺に近付いて来  る。裸足の足がペタペタと音をたてて  いた。

 『代わりに俺がやるから、退いて』

 長谷は保健医の名前だ。

 先輩は俺を半ば押しのけるように薬品  棚の前から退かすと、手慣れたように  薬品棚から消毒液とガーゼを持って行  った。

 保健委員…とかだろうか?物の位置を  ちゃんと把握している。

 『何ボーっとしてんの?早くこっち来  てくんない』

 如何にも面倒臭いですーっと言った、  怠そうな口調だった。

 俺は謝りつつ、慌てて先輩の前の丸椅  子に腰掛ける。

 『何これ。どっかにぶつけた?』

 先輩の細い指が俺の前髪を掻き上げ、  こめかみの傷を眺めて聞く。

 間近で見る先輩は更に綺麗で、おまけ  に何だかいい匂いがする。

 篠山西高校の生徒とは思えないほどだ  った。



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