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 『何か…クラスの奴が投げた椅子が当  たっちゃって』
 『ふぅん』

 自分から傷のことを聞いてきた割には  返事は素っ気ない。

 『じゃあ消毒しとくから』

 先輩は無表情のまま俺の傷を消毒して  ガーゼを貼ってくれた。

 俺はその間、至近距離にある先輩の顔  を見るわけにもいかず、綺麗な脚線美  を描く脚とかワイシャツの隙間から見  える肌を見ていた。

 いくらでも変態なりスケベなり言って  くれ。
 先輩に興奮しない奴の方がおかしいと  思うのだ。

 そうやって俺が見ていたのに気付いた  からか、先輩がクスリと笑う。

 綺麗な唇の口角が上がった。

 『俺のことが気になる?』

 そう言いつつ片膝を椅子の上に乗せる  。ワイシャツの裾が脚の付け根まで捲  れて、淫猥なものになっていた。

 『ぇっ…と、あの…』

 俺はと言うと、間抜けのように口をパ  クパクさせて赤面していただけ。

 自慢じゃないけど、中学でも女の子と  付き合ったことすらない。俺は色恋に  疎いんだ。

 先輩は手の平を俺の背後の薬品棚に付  く。

 薬品棚がカタリと音をたてた。

 『俺は』

 先輩の目が伏し目がちになり、長い睫  毛が際立つ。

 『気持ちよければ、性別は関係ないと  思うんだよね』

 先輩の言葉を頭の中で繰り返している  俺の唇に、濡れた柔らかな感触。

 俺の目の前には先輩の顔があった。

 音が聞こえなくなって、景色が動きを  止める。
 時間の感覚が全くなくなった。

 何秒後か何分後か、先輩は俺を突き放  すようにいきなり離れて行ってしまっ  た。

 何も言えずにいる俺を放置したまま、  先輩はカーテンの奥――ベッドの方へ  消えていった。

 俺の意識は呆然としながら、心臓は早  鐘のように高鳴っている。

 これが俺の…初恋。

   ‡   ‡   ‡

 「うわサブっ!お前の回想さぶい!」  「やめて!俺の頭を覗かないで!」

 いつの間にか俺とみっちゃんのそばに  は、同じ陸上部員で5組の城野が居座  っていた。

 城野はみっちゃんの遠縁らしい。全く  可愛くないけど。

 ワックスでツンツンの茶髪(崩すと怒   られる)、両耳にピアス。
 顔は一般的に格好いいタイプだ。

 俺の友人その1といったところ(みっ   ちゃんは親友だ)。



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