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 その篠山西高校に1ヶ月ほど前に入学  した俺、高里 桔平。

 別段目立つような生徒でもなく、放課  後は陸上部員としてグラウンドで過ご  している。

 「それで桔平、先輩とはあれから会え  たの?」

 俺の隣に腰を降ろして話し掛けてきた  陸上部員の一人。

 みっちゃんこと浅賀 満月、俺と同じ   1年3組だ。

 染めたらしい明るい栗色の髪、くりく  りとした大きな目、小柄な体型。

 人懐っこい性格からみっちゃんは人に  好かれやすく、その可愛い容姿から校  内マスコット的存在となっていた。

 俺はクラスと部活が同じだから仲がい  いけど、友達の俺から見てもやっぱり  みっちゃんは可愛い。

 「それがさ、まだ一回も見かけてない  んだよね…」

 俺はペットボトルを咥えているみっち  ゃんに、溜め息と共に返事をした。

 そしてあの日の記憶を辿る。

   ‡   ‡   ‡

 その日の俺は被害者だった。

 4時限目の授業は世界史、誰一人とし  て先生の話を真面目に聞いていないよ  うな、いつも通りの風景。

 出席番号一番、みっちゃんはコクコク  と船を漕いでいる。

 俺はノートの切れ端を丸めてみっちゃ  んに当てようゲームを楽しんでいたん  だけど、それは突然に起こった。

 俺の斜め後ろの後ろ、木藤君(これで   キフジと読む)がいきなりブチ切れて   しまったらしい。

 木藤君は本当なら3年の教室に居るは  ずの人だ。
 つまりダブり。しかも二年。

 何でもヤクザの組長の一人息子らしい  。金髪も一年生の教室ではかなり目立  っている。

 だがそれより何より、彼はジャンキー  で手が付けられないと言う。

 ジャンキー、いわゆる薬物依存症だ。 

 その木藤君がいきなりキレて椅子を投  げたからもう大変。

 投げられた椅子は上手く俺のこめかみ  を強打した後、ドアに向かった。

 その時ちょうど授業放棄していた今井  君が帰って来てドアを開ける。ドアを  開けた今井君を椅子が襲う。

 今井君キレる、木藤君と喧嘩する。

 先生もキレる、俺、放置。

 『桔平、大丈夫!?』

 騒ぎに目を覚ましたらしいみっちゃん  に気遣ってもらって、俺は半泣きで保  健室に行くことになった。

 結構痛かったし、こめかみが切れて血  が出ていたからだ。



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