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次の日の昼休み。
友人たちと教室で喋っていた僕の元に山根が来た。

「円くん」

その声に僕だけじゃなく、周りも顔を上げて唖然とする。
なんせお一人様主義の山根だから、こいつが話しかけてくるなんて誰も1ミリも考えてないんだ。

「山根?」

友人の一人が声をかけるが山根は無視。僕にしか視線を向けていなかった。

「今日の放課後は空いているかな?昨日のことについて円くんに話がある」
「…昨日のこと?」
「ここでは話されたくないだろうと思ったんだけど」

相変わらず穏やかな笑顔のくせに脅しのようなことを言う。
話の内容は思い当たる節がありすぎて何がなんだかわからないが、とりあえずここで話されると僕の今後が危うくなるというわけだ。

「わかった、付き合う」

僕は友人たちの視線を感じながら、ため息混じりに返事をした。

「それじゃあ放課後、図書室で待ち合わせしよう」

山根は嬉しそうな声音で約束を取り付けると教室から出て行く。
その姿が見えなくなるのを待って、友人たちが騒ぎ出した。

「円と山根って仲良かったのか?」
「つーか山根があんなに喋ってんの初めて見たっ」
「お前、なんか弱み握られてんの?」
「なんなら付き添うぜ」

僕は曖昧に笑って誤魔化す。どう説明するかも思い付かなかったからだ(もちろん付き添いは丁寧に断った)。

騒ぐ友人たちを尻目に、もしも山根が携帯を持っているならアドレスを教えようと考える。
山根と付き合いがあるのはあまり探られたくなかった。

‡   ‡   ‡

高校の図書室に入ったのは入学式以来初めてだった。あまり人は多くないし、そこまで広くもない。
入るとすぐに山根の姿は見つかった。

「よく来てくれたね、円くん」
「あぁ」

とりあえずまずは周りに知り合いが居ないか確認する。
それから山根の向かいに座った。

「昨日のことって何」

早速話を始めようとする僕に山根が微笑む。周りに視線を走らせながら、少し声のトーンを落として話し始めた。

「君は犯人の心境が気になると言ったね」「…その話か」
「その望みを叶えることは不可能ではない、かもしれないよ」

童話の魔法使いみたいだ。望みを叶えるとか言う辺り。

「どういうことだよ?」
訝しむ僕に山根は真面目な顔をした。



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