7 次の日の昼休み。 友人たちと教室で喋っていた僕の元に山根が来た。 「円くん」 その声に僕だけじゃなく、周りも顔を上げて唖然とする。 なんせお一人様主義の山根だから、こいつが話しかけてくるなんて誰も1ミリも考えてないんだ。 「山根?」 友人の一人が声をかけるが山根は無視。僕にしか視線を向けていなかった。 「今日の放課後は空いているかな?昨日のことについて円くんに話がある」 「…昨日のこと?」 「ここでは話されたくないだろうと思ったんだけど」 相変わらず穏やかな笑顔のくせに脅しのようなことを言う。 話の内容は思い当たる節がありすぎて何がなんだかわからないが、とりあえずここで話されると僕の今後が危うくなるというわけだ。 「わかった、付き合う」 僕は友人たちの視線を感じながら、ため息混じりに返事をした。 「それじゃあ放課後、図書室で待ち合わせしよう」 山根は嬉しそうな声音で約束を取り付けると教室から出て行く。 その姿が見えなくなるのを待って、友人たちが騒ぎ出した。 「円と山根って仲良かったのか?」 「つーか山根があんなに喋ってんの初めて見たっ」 「お前、なんか弱み握られてんの?」 「なんなら付き添うぜ」 僕は曖昧に笑って誤魔化す。どう説明するかも思い付かなかったからだ(もちろん付き添いは丁寧に断った)。 騒ぐ友人たちを尻目に、もしも山根が携帯を持っているならアドレスを教えようと考える。 山根と付き合いがあるのはあまり探られたくなかった。 ‡ ‡ ‡ 高校の図書室に入ったのは入学式以来初めてだった。あまり人は多くないし、そこまで広くもない。 入るとすぐに山根の姿は見つかった。 「よく来てくれたね、円くん」 「あぁ」 とりあえずまずは周りに知り合いが居ないか確認する。 それから山根の向かいに座った。 「昨日のことって何」 早速話を始めようとする僕に山根が微笑む。周りに視線を走らせながら、少し声のトーンを落として話し始めた。 「君は犯人の心境が気になると言ったね」「…その話か」 「その望みを叶えることは不可能ではない、かもしれないよ」 童話の魔法使いみたいだ。望みを叶えるとか言う辺り。 「どういうことだよ?」 訝しむ僕に山根は真面目な顔をした。 [*前へ][次へ#] |