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ぷつ、と盛り上がった血が首筋へと伝っていくのを目で追う。そのまま下へ引くと柔らかな皮膚が裂けて、じわじわと血が流れ出てきた。
何というか、厚紙をカッターで切るような感覚だ。

俺の右手にあるナイフは、円くんのちょうど鎖骨の辺りにまず刃を埋めた。それから斜めに降りて肋骨の半ば辺りまで。
赤い線が出来た。

その間、円くんは眉を潜めて息を詰めていた。決して声は上げない。
ただ痛くないはずがないし、本当は我慢しているんだろう。それかプライドがあるのかもしれない。

「…満足したか?」
「うん」

俺の手で付けた傷が円くんの身体に綺麗に刻まれている。
円くんは呆れていたが、俺はものすごい満足感を得ていた。

「これが、証だ」

左手で触れる。まだ指の傷は癒えてなくて、きっと俺の血液と円くんの血液はそこで混じっているんだろう。
背筋がぞくりとする。

「君が俺のものだという、証」
「はいはい。わかったから帰っていいか?夕飯作んなきゃいけないんだよ」

激しい温度差を感じたものの、俺は円くんの上から退いてあげた。

「お前って変態臭いよな」

円くんは軽蔑したような視線を向け、傷はそのまま、俺に背を向けて保健室を出て行く。
残された俺は指先に絆創膏を巻いてから、乱れたシーツを直して保健室を出た。

‡   ‡   ‡

部屋に戻ってからパソコンを立ち上げる。姉とは出掛けにすれ違い、バイトに行くと言っていた。
姉は飲食店で働いているので帰りは遅く、両親も共働きなため比較的遅い帰宅となる。
俺は適当に賄った夕食を部屋に持ち込み、パソコンの前に座った。

調べたいのは円くんの過去だ。
何も俺が積極的に探ろうとしているのではなく、先日彼が自主的に話した。

円くんの母親と姉は彼の目の前で殺されている。しかもかなり残忍な方法で。
ならば有名でないはずがなく、少し調べればインターネットからは情報が溢れ出てくるはずだ。

キーワードも揃っている。
何せ同級生だし、彼の名前や家族の殺害方法、年代もわかっているのだ。

悪趣味だと非難されそうだが、生憎俺は自覚があるので気にしない。
ちなみに別に家庭環境だとか友人関係で何か辛いことがあって歪んだわけでもない。

趣味が少々特殊なんだと思えばいいだろう。



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