[通常モード] [URL送信]



決めていた。
初めて見たとき、話したとき、そして先日行動を共にして。
何がどう惹かれるのかはわからない。

「君は、俺のものだよ」

そう言うと円くんは嫌そうな顔をした。

「…僕は僕のものだろう」
「いや。君の命は、俺のものなんだ。そう俺が決めた」
「勝手に決めるな」
「誰かのものとして生きるのもいいじゃないか。そういう道もある」

円くんの頬骨を指でなぞる。ガーゼの下は痣が出来ていたはずで、殴られて切れてもいた気がする。
そこをぐっと親指で圧すと、円くんは顔を歪めて俺の手を払い落とした。

「少なくとも、それは僕の道じゃない。僕は好きなように生きるし、好きなように死ぬ」
「そう思っていてもいい。でも君は俺のものなんだよ。俺が君を殺すその日まで、他の誰かが君に手を出すのは許さない」

円くんは冷めた目で俺を見つめた。

「お前が言いたいことはわかったよ。僕を殺したいんだろ?今はまだやらないけど。それを僕に自覚させたいわけ」
「…そう、かな。俺はいつか君を殺したいと思ってる。そうだね、君には常にそれを感じていて欲しいんだ。君は俺に殺される為に生きる」

俺は頭の中で考えながらそう言った。
円くんは俺にとっての獲物だ。どうしてだろう、彼がこの手で死んでいくのを見たいと思ってしまう。
今までこんなに強く思ったことはなかった。

「何かお前、変だぞ」
「うん。俺も不思議なんだ」

ナイフを左手の指に這わせる。鈍い痛みに血が流れる。それが円くんのYシャツに垂れて、赤い染みを作った。

「やめろよ」

円くんが俺の手首を掴む。

「僕の目の前でそういうこと、するな」

そう言われ、俺はゆっくり微笑んだ。
円くんのYシャツのボタンを腹まで外すと、さすがの彼も体を起こしかける。それを押し返して止め、俺はナイフを円くんの首筋に当てた。

「………」

円くんは無言で俺を見る。
俺はそれを見て、やっぱり何だか自然と笑みを浮かべてしまっていた。



[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!