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女子中学生連続殺害事件は犯人が見つからないまま、久我山での3人目以降新たな展開を見せていなかった。

日が経つと学校周辺の報道陣と警察が引き上げて行き、既に久我山と清泉高校には元の静けさが戻っていた。
僕としては一息つけたと言うか。

そうして全てが元通りになったころ、僕は学校帰りに一人で久我山に登っていた。
あの日からニュースやネットで調べて、死体が久我山のどこで見つかったのかを知った。詳しい発見現場はすぐにわかった。

第一発見者は地元の若い男女グループだったらしい。
彼らが意気揚々とネットに書き散らした情報はいとも簡単に広まっていた。このご時世、そういった情報を集めるのは容易い。

学校帰りの直ぐだから日が沈む前には現場に着けるはずだ。
道なりに進んだあとは、頭に叩き込んだ地図を頼りに横道に入っていく。獣道は背の高い草に阻まれて歩きにくかった。

そうして直に一ヶ所だけぽっかりと、木が避けるようにして出来た空き地に出る。
四方を木々に囲まれて出来た空き地は異様な風景だ。そして南側の木――中でも一番太い木の根元。
全て綺麗に片付けられてはいるが、そこが死体の発見現場だった。

僕はその木の根元の前にしゃがみ込む。ニュースで見た顔を思い出した。
まだ14歳だった彼女は、子宮を切り取られてここに座らされていたと言う。首には縄で締められた痕がくっきりと残っていた。少なくとも死後20日は経っていたと言うから、彼女はひっそりとここに居たのだろう。誰にも見つけられずに。

ネットには友人たちに囲まれて笑顔を浮かべる彼女の写真が出回っていた。
何の変哲もない、極一般的な中学生。
彼女はなぜ殺されたのか。犯人はどんな気持ちで彼女を殺したのか。
僕には考えが及ばない。

「…円くん?」

しゃがみ込んで考え事をしていた僕は、ふいに背後から名前を呼ばれてビクリと肩を跳ねさせてしまった。

「村岡 円くんだよね?」

僕はしゃがんだまま後ろを振り返る。
そこに居たのは意外にも…、意外にもあの山根 元晴だった。



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