4 コールは6度目でやっと止まった。 『もしもし…?』 不思議そうな声に、僕は半ば怒鳴るようにして電話口でまくし立てる。 「もしもし山根!?今お前どこに居るっ」「…松山駅のホームだよ」 「まだ市内なんだな?電車はいつ来る?」「あと20分ほどかな。そんなに焦ってどうし、」 山根の話は最後まで聞かずに電話を切り、僕は自転車を全力で漕ぎ出した。 駅に着くと自転車を投げ出すように停め、ホームに走り込む。僕が居る反対側のホームに山根が座っていた。 「…くそっ」 僕はまた走って反対側に向かう。 走り込んで来た僕の姿に目を丸くした後、山根はいつものように笑みを浮かべて僕にお茶のペットボトルを差し出した。 「久しぶりだね、円くん」 ベンチで仰け反る僕に山根が微笑む。 「来ないんだと思ってた」 僕は山根と目を合わせないままで呻いた。 「僕だって今の今まで来るつもりなんかなかったよ。自分でも何でここに居るかわからない。わざわざ友達と遊ぶ予定を断ったんだぞ、ふざけるなって怒られた」 「円くんが来るに越したことはないけど、俺は強制したつもりはないよ」 「…わかってる」 段々と鬱々とした気分になってきた。 何でここに居るんだったっけ…気付いたら山根に電話をかけていたんだ。 本当にわからない、僕はまた山根の趣味に付き合って犯罪に首を突っ込むつもりか。行かないって決めてたのに。 「君は俺と同じように'惹かれた'のかもしれないね」 何に、なんて聞きたくもなかった。山根と同じになんかなりたくない。 ホームにベルが鳴り響き、電車が来ることを知らせる。 「深嶽村は遠いよ?お父さんは心配しないかい」 「あぁ、うん…友達と旅行に行くって言ったら喜んでたから」 「それは酷い嘘だね」 山根はおかしそうに笑った。 確かに父さんが期待しているような、青春真っ盛りの楽しい旅行にはなりそうにない。 「向こうに着くまでに、深嶽村での事件について話しておこうか」 人の少ない車内、ボックス席で僕の向かいに座る山根が穏やかに言う。その内容は恐らく穏やかな話ではないんだろうけど。 僕が何も答えないでいると、山根は勝手に話を始めた。 [*前へ][次へ#] |