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俺様☆みらくる!
さすがは、財閥!
「皆さん、くれぐれも計画通りに」


清田が無線で念押しをした。
きらびやかな装飾に包まれた会場で、さすがは財閥の息子たち。
浮かず目立たず行動していた。
宵もまた同じく、バーテンをこなしている。


「そろそろ祝辞だ」

「大抵は幹部の首謀者が挨拶するもんだよね」

『いらっしゃいませ。まぁ、あいつしかいねぇよ』

「?思い当たる人が居たのですか?」

『かしこまりました。まぁな。唯も薄々気づいていたはずだがな?』




宵は仕事をしながらも小声でそう言った。
知っていたならば回りくどい行動などしなければいいのにと思うだろうが、確証がなければ大きく出られない。


「来たぞぉ」

「気を引き締めなさい、時枝」





壇上に上がるスラッとした男性。
明るくジョークを挟みながらも、若草を引きずり落とす仲間たちに挨拶をしている。
宵は、睨みながら清田へ言った。


『唯を狂わす野郎……実の父親だ』




清田は息を飲んだ。
凄む唯の声は、初めて聞いたからだ。
こんなにも憎しみを含む低い声が出せるものなのか。
否、今は宵だからこそか。
真相はさておき、首謀者が父親なら、どう手を出す気だったのか?

皆に指示するのも忘れ、清田は考え込んでしまった。




「…ぃ、おい。どうすんだよ、これから。あのおっさんを伸してやるか?」

『指示してやらなきゃ動け、っ!』

「どうしました?何ありましたか?!」

『……ご無沙汰しております。愛斑様』




宵の様子がおかしい事に気づき、清田はすぐに監視映像を見た。
なんと、壇上から降りた唯の実父が宵に近づいていたのだ。


「フォローに回るか?」

「いけない、バレてしまいます。いいですか、まだ様子見ですよ」

『何でしょうか?バイトはいけませんか』

「不自然にならんように近づいて会話を傍受するよー?」

「頼みます、時枝」




どうやら、彼は唯として接していてまだ宵とは気づいていない。
不幸中の幸いだが手が出せないので辛い状況には変わりない。
清田は、耐えてくれと願うしかない。


そこに、三樹雄が近寄った。


打算があっての行動か、周囲はハラハラしながら見守る。


「唯さま!?何故ここに!お声をかけてくだされば良かったのに!」

『っ、三樹雄!ビックリした。て言うか言えるわけないでしょ!バイトなんて…』

「彼は?」

『学園の友人です。三樹雄、彼は…』

「パーティーの招待をして下さった方くらいわかります。挨拶が遅れました」

「いいや、いい。またな。紫乃」

『僕は紫乃ではありません』

「紫乃…」

「三樹雄、宵を助けてやりなさい。今がチャンスだ。皆もうまく抜け出せ」

「了解、三樹雄!あとは頼んだぞ」

「あとでね」




小さな声で皆は三樹雄に声をかけて抜け出していく。

しかし、依然として去らない実父に三樹雄は手が出せない。
宵も困っていた。
唯のフリはできるが唯の思考は真似できない。

どう会話を切ればいいのか判らなかった。




「モスコミュール」

『ッ!あ、畏まりました!』

「唯さま、後できっちり聞かせてください!私も失礼します」

「あぁ楽しんで……」




上手いことに客が来て宵はキッチンルームに消え、三樹雄も抜け出せた。
当然…モスコミュールなど、出ないまま。







『ハラハラしっぱなしだぜ』

「はー、もう寿命縮みますよー」

『助かった。さすがは金魚のふん…否、嫌味はなしにしよう。ありがとう』

「唯さまの体ですからね」

『っ、嫌味なしにしようとしたのに、貴様は!』

「いいから帰りますよ。収穫は予想以上のものでしょう?陰険副会長」

「……何故、若草を引きずり落とすのか、よくわかりました。作戦は変更しなければならないかもしれない」




清田は、判ってしまった。
同時に切なくなってしまった。
もしも宵ではなく唯なら、確実に傷ついていただろう。
わかっていても、目にするのが辛いときもあるから。






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