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おはようのキス
甘々





瞼を開けると、一番にシンジ君の顔が見えた。
それだけで嬉しくなる。
今日もいい一日になるはずだ。
静かに眠っている君。可愛い寝顔。
自然と僕を笑顔にする。
僕は起きあがると、洗面台へ行き、顔を洗って歯を磨いた。
時計を見ると、いつも起きる時間よりも早かった。
昨日は何もせずに寝たし、その分早く寝たわけだから、早く起きてしまったのだろう。
特にすることもなく、シンジ君を眺める。
本当にシンジ君はどれだけ眺めても飽きない。

「ん……」

シンジ君がもぞもぞと動いたけど、寝返りをうっただけのようで、全く起きる気配はなかった。
でも何だか、寝言も言えないような声が妙に色っぽくて、僕はシンジ君に触れたいと思った。
起こさないようにそっと唇を重ねてみる。このくらいじゃ君が起きる様子はない。
起こしちゃいけないとは思ったけれど、重ねるだけじゃ満足できなくなって、舌を使って閉じた唇をこじ開けてみる。
少しだけ間が開いて、そこに舌を差し込んだ。

「ふ……」

漏れる吐息に煽られて、止められなくなる。
君の瞼が開いていく。
起こしちゃったな、と反省はせずにそう思った。

「何してんの?」

半分寝ぼけてるような声で君が尋ねた。

「何って、キス」
「起きたばっかって、口の中雑菌すごいんじゃないの?」
「雑菌……」

予想外のことを言われて、一瞬ぽかんとしたけど、段々笑いがこみ上げてきた。
雑菌って……。
色気も何もあったもんじゃない。

「何笑ってんの?」
「だって、キスして雑菌のこと言われるなんて思わなかったから」
「……まぁ、いいや。歯磨いてくる」

君はゆっくりと体を起こして立ち上がる。
何だか僕とキスした直後に歯を磨かれるのが嫌で、君が洗面台に行かないように急いで君に声を掛けた。
別に君が歯を磨きに行くのは僕とのキスが嫌だったなんてことは全然なくて、ただ単に朝起きたからいつも通り磨くだけだってことはわかってるけど。

「せっかくキスしたのにすぐ歯磨いちゃうの?」
「磨かないと気持ち悪いだろ。君も磨いたら?」
「僕はさっき磨いたよ」
「わかってる。君の口の中歯磨き粉の味がした。でも、磨いてない僕とキスしただろ?」
「僕は気にしないよ」
「僕が嫌なんだけど……君がいいならいいや」

そのまま君は一人で洗面台に行こうとする。
意味が伝わらなかったみたいだから、もう少しわかりやすく気持ちを伝える。

「それより、キスした直後に歯磨かれるのって何か嫌だ。歯磨いたらまたキスしようよ」
「歯磨き粉の味しかしないと思うけど」
「それでもいいよ」
「まぁ、いいけど」

そう言い残すと、ふらふらと歯を磨きに行ってしまう。
寝ぼけてんのかな。
突然雑菌がどうとか言い出すし。
ていうか、起きてても口の中って雑菌多いんじゃないのかな?
それにキスしようと言ってもやけに素直だし。
でも、顔洗ったら完全に起きるよね。
完全に起きたら、恥ずかしがって、キスさせてくれないかもな。
そんなことを考えながらシンジ君を待つ。

「君さぁ、随分早く起きたんだね」

そう言いながらシンジ君が戻ってくる。
声もしっかりしてるし、完全に起きたみたいだ。
やっぱり、キスしてもいいっていうのは寝ぼけてたからって言われて、なしになっちゃうのかな。
予想してたとはいえ、内心がっかりしつつ、答える。

「だって昨日ヤらなかったじゃん? だから早く寝た分早く起きちゃったみたいで」
「だからって僕まで起こさないでよ」

ため息を尽きながら、シンジ君は僕の横に腰を下ろす。

「朝御飯作らないの?」
「君が作ってもいいって言うなら作るけど?」

その言葉に含みを感じて、僕はその言葉の意味を考える。
もしかして……

「キスしてもいい?」

目を逸らして君が頷く。
本当にキスしてもいいってわかって嬉しくなる。
優しく唇を重ねた後、舌で君の唇を舐めて口を開けるように促す。
それに答えて開いた君の口に舌を入れて、口の中を隅々まで探る。
舌を絡ませようとしたら、君からも絡ませてきてくれた。
僕の気持ちにしっかり答えてくれる君。
唇を離すとシンジ君はすごく色っぽくてドキッとした。

「あは。歯磨き粉の味がする」
「だからそう言っただろ」
「本当にキスしてもいいなんて思わなかった」
「からかったの!?」

その声に少し怒りを感じて、慌てて否定する。

「そ、そうじゃなくて……寝ぼけてるかと思ったから」
「確かに少し寝ぼけてたけどさ、でも、寝ぼけててもいいって言っちゃったし」

こうやってしっかり約束を守ってくれるシンジ君が好きだ。
律儀っていうか。
何だかんだで僕を喜ばせてくれるところが。

「さてと、朝御飯作ろうか。何食べたい?」
「シンジ君! ……痛っ」

元気よく答えたら、シンジ君に殴られた。

「何で殴るのさ!」
「殴ってない。軽く小突いただけ」

いや、軽く小突いたがあんなに痛いかな?
恨めしそうな目でシンジ君を見たら、シンジ君は悪びれる様子もなく言った。

「何その目。変なことを言う渚が悪いんだからね」
「変なことじゃないよ。だってシンジ君色っぽいしさ。朝御飯までまだ時間あるしさ」

そう言って、シンジ君を優しく押し倒した。

「まだ朝なんだけど……」
「昨日の夜ヤってないからいいじゃん」
「そういう問題じゃない」

そういう問題じゃないことは僕もわかっていたけど、僕は何とかして君とヤりたくて仕方がなかった。
何でもいいから君をその気にさせたくて必死だ。

「昨日ヤらなかったところで結局今日こうなるのか……」

僕の思いが通じたのか、諦めたような君の口調。
僕を受け入れてくれるんだとわかって、自然と笑顔になった。

「じゃあ、いただきます!」

今日もいい一日になる予感だ。














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そういうつもりで書いたんじゃないけど、豆しばを思い出した。

H22.9.23



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