縁切りの神様
貴方を想うからこそA
「今日も良い天気だなぁ」
そう呟いたのは神社の住職である『宗貞』である。
彼は若くして実家の後を継いだのだが、其の物腰の柔らかさと端麗な容姿のお陰で神社は毎日色めき立ち参拝者が色んな意味で後を絶たなかった。
だから、父や祖父もニコニコと喜び
「いやぁ、お前が住職になってからウチの枯れた賽銭箱(さいせんばこ)も此の通り潤って嬉しい限りだよ!!」
なんて言うから。
呑気で単純な父と祖父の言葉に宗貞はハァ。と呆れて深い溜息を吐く事しか出来なかった。
其処へ―――
「あのぅ……」
「!!」
不意に歳若い娘が話しかけて来たので。
其の、酷く思い詰めた表情を見るなり
ははぁ。此の表情はもしや―――
と心の中で呟いた宗貞は娘が単なる好奇の気持ちで訪れたのでは無い事に勘付き
「どうかされましたか??」
真面目な顔付きで問うてやったのだ。
そうすれば
「実は‥……」
などと躊躇いがちではあるが、娘が口を開いてみせたので。
立ち話も難だろう。と思った彼は
「良かったら室内でお話を伺いましょう。此処は人目に付きます故」
と、娘に気遣い手招きをしては堂内に上がる様勧めるのだった。
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