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縁切りの神様
二兎を追う者は一兎をも得ずA




「あのね。ちょっとお聞きしたい事があるから。お部屋に入れて貰ってもいいかしら??」
「!!!!!」


何と、彼女は兄である宗貞の部屋に入れて欲しいと懇願して来たのだ。



そんな、妹である女からの予想外の懇願に



「え、あ‥部屋に?!」

当人である宗貞は一層狼狽させられ、困惑気味に答える事しか出来なかった。




「ダメ、かしら??」
「い、いや。そんな事は無いが‥少し待ってくれないか??」
「えぇ、良いですけれど……一体どうしてですか??」
「あぁ、まぁ。いろいろと準備があるというか。直ぐに開けるからちょっと待って居なさい」



今まさに、姉代わりの様な存在をおかずにして自慰に耽ろうとしていたというに。

だのに、想い人である愛しい妹が部屋を訪ねて来て、しかも入れてくれという‥‥



其の突然の申し出に、狼狽えるな。という方が無理難題という物。


しかも、下半身で主張する様に張り詰めたままの逸物は一向に萎える事無く天を仰いだままだ。


其れに頭を悩ませながら



「さて…どうしたモノか」

と、途方に暮れる宗貞であったが。




「あの……」
「!!」
「ご都合が宜しくないのでしたら、暫くしてまた出直します」


遠慮がちに、扉越しに声を掛けて来る吉子のいじらしさにやられてしまった宗貞は、キュッと唇を結んで




「いや。大丈夫だ、入りなさい」

などと見栄を張り、急いで二人を隔てていた一枚の扉を開けるのであった。










「……私は茶の用意をしてくるから適当に掛けていなさい。直ぐに戻る」
「はい‥‥‥」


そう言って、宗貞はさっさと階下へ姿を消してしまった。



ぽつん、と部屋に一人取り残される吉子。

其の間に彼女は、初めて見るであろう異性の部屋に内心ドキドキと胸を昂ぶらせていた。





「…‥コレが、お兄様のお部屋かぁ」

村八分にされ、不当な差別を受けていた吉子。



彼女は他人の家はおろか、自分と母親以外の人間とはろくすっぽ付き合った事が無い。



其れが友人関係だろうと、公的関係であろうと例外無く、だ。




だからこうして、他人が生活している私的な領域には一切立ち入った事が無く

故に彼女は好奇心という名の高揚感をひたすらに募らせていった。





「直ぐにお部屋に入れて下さらなかったけれど、どうしてかしら??」
「お部屋を片付けた気配は感じられなかったし、そんな事をする必要が無い程整理整頓の行き届いたお部屋に見えるのだけれど」
「何か見られて不味い物でもあるのかしら??」



まさか、堅物の代名詞の様な男の兄がそんな如何わしい物を持っているだなんて。

ちっとも想像が付かない。



けれど吉子とて年頃の娘だ。

例え其れらしい事情が無くとも―――血縁関係の有無に関わらず異性を私室に招き入れるにはそれなりの準備が居るのであろう。と勝手に納得してみせた彼女は




「…‥お兄様の匂いでいっぱいだわ///なんだか、変な気分になりそう」

密かに想いを寄せる兄の匂いに許されぬ恋心を募らせ、ほうっと深い溜息を吐いてみせるのだった。


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あきゅろす。
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