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縁切りの神様
一夜の過ちG







「ふぁ‥‥っん///」
「!!」

酷く情けない事に―――

口付けだけですっかり蕩け切ってしまったのである。




「おや??口付けだけでもう出来上がってしまったのかな??」
「なりひら‥はんっ///」


うるうると切れ長の瞳を潤ませ、物欲しそうに自分を見詰めて来る京。


あぁ、此の光景を何度夢見た事か。

業平は口端が自然と上がるのを極力抑えながらも、至極嬉しそうな声色でこう言った。




「ずっとずっと欲しかったんだ、京」
「其れこそ10年もの間」
「君が宗貞に夢中だったあの頃から」
「なのに君は…‥其れでも尚俺を待たせるつもりだというのかな??」


背中を優しく擦られると勘違いしそうになる。

此の男に抱かれ、愛される事がまるでかけがえの無い幸せなのだと。



でも‥‥



「ダメ、堪忍してや…業平はぁん///」
「どうして??」
「だって、だってうちはっ!!まだ宗貞はんの事ぉっ!!」
「……‥全く、京は相変わらずだねぇ」


結局振り出しに戻ってしまい、押し問答の繰り返し。


けれど京の気持ちが分からない訳では無い。

業平とてずっと京一人を想って来たのだ。



だからこそ、振られたばかりの彼女に一日二日で想い人の事を忘れろと言うのは余りにも酷だろうと思って

彼は薄っすらと意地悪な笑みを浮かべて言ったのだ。




「だがね、京。君は何も分かっていない」
「えっ……‥??」
「何があったかは分からないが―――今日だけでも俺が宗貞の事を忘れさせてあげるよ」
「!!!!!」


しゅるり

何時の間にか腰に回った其の手が着物の帯を勝手に解いているでは無いか。


なんて手馴れた男なのだろう。



じわり。

嫉妬にも似た、何処か遣る瀬無くて仄暗い感情が京の心に広がっていく。



此の手は自分以外の女を抱いた事があるのだろうか??

きっと‥恐らくではあるが経験くらいは有るに違いない。


京よりも年上で、付き合った数の女性は彼女が知っているだけでも10人は軽く越えていたのだから。




「…‥‥」


そう思うと何だか腹立たしくて



「どうしたんだい??京。そんなに不機嫌そうな顔をして」
「別に‥業平はんには関係おまへん」
「ハハッ、本当に手厳しいなぁ」

自分はこういった事が初めてだというのに、目の前の飄々(ひょうひょう)とした男は余裕綽々(しゃくしゃく)に見えるのが酷く滑稽(こっけい)にすら思えた。



だから―――





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