縁切りの神様
一夜の過ち@
「はぁ、はぁ‥はあっ!!」
部屋から飛び出していった京を追いかけたまでは良かった。
良かったのだが―――
「……‥クソッ///」
彼女の姿はもう既に無く
完全に見失った事に気付かされた宗貞は忌々しげに舌打ちする事しか出来なかった。
「京殿‥‥…」
あの時は突然の事でらしくなく動揺してしまい、彼女の気持ちも考えずに思わず突き放した様な態度を取ってしまったが。
「…私は何て事をしてしまったんだ!!」
いざ冷静になると、今更ながらに悔やまれる。
姉代わりの様に慕っていた女。
其の彼女が自分の事を好きだという。
正直、信じられなかった。
だが其れ以上に自分には心に決めた女が居て、例え彼女と結ばれる事が100%無かったとしても彼女以外の女と男女の関係になるなんて願い下げだったから。
だから―――
「女性に手をあげるなんて‥男子としてあるまじき行為では無いか」
だから無意識に手が出てしまったのかもしれない。
愛する吉子以外を受け容れたくないと。
愛する吉子に誤解される様な行いはしたくないと。
しかし、咄嗟の事とはいえ紳士であるという自負を多少持っていた宗貞は自分が犯した行為を深く恥じる様に其の場で項垂れてしまったのだ。
そして
「‥‥…私もまだまだ修行が足りない、という事だろうな」
不可抗力とはいえ、姉代わりであった女を傷付けてしまった事を必要以上に後悔していた宗貞は
「仕方ない。一旦帰って京殿の携帯電話に連絡を取ろう」
行方の分からなくなった姉を心配しつつも、渋々踵(きびす)を返すのだった。
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