縁切りの神様
もしも奇跡が存在するのならばE
「……‥残念ですが。諦めて下さい」
「そんなっ‥!!」
ぴしゃりと
一切の反論も許すまじ。と言わんばかりの厳しい口調でそう告げてやった宗貞が
「では私はコレにて」
スクッと立ち上がっては其の場から去ろうと試みた瞬間―――
「お願いします!!」
「ッ///」
ガバッと後ろから依頼人に抱き付かれてしまい。
不本意ながらも男に抱き付かれてしまった宗貞が物凄く嫌そうな顔をして振り返って見せても
「藤堂さん!!いい加減に―――」
「どうしてなんですか!!こんなに人が熱心に頼んでるっていうのに‥ちょっとくらい協力してくれてもいいじゃないですかっ」
顔をくしゃくしゃに歪めて泣き縋ってくる藤堂にはまるで通用せず。
それどころか、余計に彼を追い詰める羽目になってしまったのだ。
そんな、自業自得とはいえ愛する妻を失い追い詰められていた藤堂を一瞬哀れだな。と思ってしまった宗貞ではあったが―――
「貴方はまるで分かっていませんね」
「!!!!!」
バッ、と乱暴に藤堂を力任せに振り払っては、こんな事を言い出したのだ。
「一度目は大目に見ましたが‥貴方は何時までもそうやって上手く行かない度に神頼みにして生きていくつもりですか??」
と。
其の宗貞の思い掛けない問い掛けに藤堂は
「え……‥??」
と、眼鏡越しに映った気弱な瞳を揺らめかせてみせた。
そして
「大切な奥様と別れようと決意した時も。よりを戻そうと思い立った時も。貴方はちゃんと彼女と話し合って自身で努力しようと一度でも試みましたか??」
「ッ///其れ、は‥」
「そんな当たり前の努力を怠って起きながら肝心な事ばかり他力本願で済ませている様ならば…どうせ此の先も同じ過ちを繰り返すだけでしょうね」
「ぐっ‥‥…!!」
何処までも容赦の無い、宗貞の辛辣な言葉に何も言い返せなくなってしまい。
案の定、図星だったかと呆れ返ってしまった宗貞は
「どうかお引取り下さい。貴方の人生は‥貴方自身で切り開いていくモノです。其れを忘れないで下さい」
何処までも甘ったれで優柔不断な藤堂の後押しをする様にわざわざ叱咤してやったのだ。
其の、一見厳しい様でしかし正論とも言える宗貞の言葉に心を打たれた藤堂は
「……そうですね。貴方の言う通り‥愛する妻の心を取り戻せるのは自分の努力次第ですよね」
などと呟いては、コレを機に心を入れ替えようと心密かに決意するのであった。
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