縁切りの神様 例え其れが醜い独占欲だったとしてもC 其れから更に一週間が過ぎた頃の出来事だった。 「お兄様!!」 「何だい、吉子」 「ちょっとご相談しても宜しいでしょうか??」 「……勿論、私で良ければだが」 ニコニコと、愛する妹が無邪気な笑みを浮かべながら近付いて来たので。 あくまで平常心を装っていた宗貞は、しかしバクバクと高鳴る心音を聞かれやしないかと内心ヒヤヒヤして気が気でなかった。 其れでも、年上と言う事もあり表面上は冷静さを保って 「で??何だい??」 と、聞いてやれば。 寺の生活に大分慣れて来たとはいえ 村に居た頃、不当な差別を受けて育った吉子は歳が比較的近い宗貞にしか心を開いていなかったので 「…‥あ、あの///其の前に‥‥誰にも言わないって約束して下さいますか??」 と、念を押しながらも兄である男にこっそり打ち明ける事にしたのだ。 「私‥アルバイトをしたいのです」 と。 しかし――― 「‥‥…は??アルバイト…だって?!」 予想外の内容に宗貞は最初、目を点にしてただただ妹である女を見詰める事しか出来なかった。 そして、彼が答えあぐねていると 「はい、アルバイトです。私も働ける歳ですから。家計の負担にならないよう、ぜひ許可を頂けませんでしょうか??」 「ッ―――」 居候みたいな立場が嫌だったのか 吉子自ら希望したのだ。 役に立ちたいと、少しでも兄達の負担を減らしたいのだと。 だが、吉子を愛して居た宗貞には面白くない話だったので。 キュッと唇を噛み締めてみせた彼は、実に言い辛そうな様子で 「……許可は、出来ない」 けれどキッパリと言い切ってみせたのだ。 吉子を、愛して居たから。 [*前へ][次へ#] |