目には目を、レイプには…(1)


『何か隠してることはねえか・・・』


叔父さんのその言葉が、耳に張り付いて離れない。



結局一睡もできずに、悲壮感漂うやつれた顔で朝を迎えた新一と拓斗は、静寂を突き破るノックの音に飛び上がった。
9時に迎えに来ると言っていた伊勢崎は、ジャストの時間で何と部屋にまで訪ねて来たのだった。



「おはようございます。よく眠れましたか」

げっそりした顔を見れば分かるだろうに、作り笑顔で問いかける伊勢崎は踏ん切りがつかない若者達の背中を押すように、部屋から出ることを促した。

「持ち物は何も要りませんよ。外泊届は・・・まだ書いていないようですね。それなりの事をしたのですから、覚悟は決めて頂かないと困ります」
「これは俺と新一の問題で、あんたは関係ないだろ!大体なんだよあの、盗聴器みたいなの。警察に訴えてやる!」

大河との会話の直後から恐れと同時に苛立ちも感じていた拓斗は、命令口調で指示を出す伊勢崎に食ってかかった。それは、得体の知れない新一のセフレへの抗議でもあり、そんな不本意な命令に従いたくないという意思の表れでもあった。

「盗聴自体は罪にはならないんですよ。盗聴は弱者が強者に対するハラスメントを暴くための一種の武器です。あなたが嫌がる新一さんを強姦しようとした罪を、警察で暴くと言うのならどうぞご自由に。ああ・・・既に水曜に強姦済みでしたね。ではこちらとしてはレイプの被害者としてあなたを訴えますが、それでよろしいですね」

「何だと!」

怒る拓斗だが、昨日の事を考えれば確かに和姦とは言い難い状況だし、それ以前にSEXを強要し新一を強姦したこともばれている。結果的には互いにセックスの快楽を共有しようとして拓斗は新一に愛撫を施し、新一は快感に負け体を震わせていた。しかし録音されている台詞には、新一の喘ぐ声と拒絶の言葉しか残されていないだろう。それを考えるとレイプを言い逃れる術が浮かばず、拓斗もこれ以上の反撃が出来ないでいた。

「では、お二人とも。門倉が首を長くして待っていますので、参りましょう」

門倉と聞き、拓斗は驚いて新一を見た。
“門倉”は新一の苗字。
それと同じ人物が自分達を待っている。それが意味するものは一体何なのか。拓斗は部屋から出て外泊届を書いているときに、新一にだけ聞こえる声でそっと聞いた。

「門倉って・・・新一、どう言うことだよ」

拓斗には・・・いや、他の誰にも知られたくは無かった事実。
自分が血のつながった叔父と性的関係を持っているなんて。そのことを必死で隠していたのに。でも、今から共に地獄の1丁目に赴く拓斗には話しておくべきだと新一は思った。内緒にしていても叔父はきっと暴露するだろうから。

「・・・・・俺の、叔父さん」
「!叔父さん?!って、そいつ・・・その、血、繋がってんのか?」
「・・・・・・・・」

答えないことが答えだった。

「・・・マジ・・・・かよ」
「・・・ごめん拓斗。多分・・・・・ただじゃすまないと思う・・・」

「ただじゃすまないって、お前の叔父さんって一体何者なんだよ」
「・・・・・分からない。分からないんだ、あの人の事は・・・俺は、何も・・・何も知らない」

「何だよ、それって・・・」

その時初めて拓斗は、手を出してはならない相手に触手を伸ばしてしまったことを知った。
実の甥とセックスする男。近親相姦。盗聴器。得体のしれない部下。寮から少し離れたところに横づけにされた黒い車。その全てが非日常的な世界の物で、今まで遭遇したことのない危機感を拓斗にもたらしていた。





車はマンションの地下に着いた。

車に乗り込んでから部屋に着くまで、誰ひとり声を発しなかった。ドアを開け部屋に入るように促され、新一を先頭に拓斗、そして逃がしはしないとでも言うように伊勢崎が最後に入りドアを閉めた。

全体的に暗い室内。奥から淡い光が差し込むリビングに向かっておそるおそる足を進めると、そこから低く唸るような身も凍る声が響いて来た。


「・・・待ってたぞ新一。お前の喘ぎ声を聞きながら、1人寂しくマス掻いてたんだぜ。かわいそうなオジサマだと思わねえかぁ?」


きっちりとスーツを着こなしてソファーに座りくつろぐ大河は、操作していたパソコンから指を放すとニヤリと笑って新一達2人をギロリと見据えた。

「お・・・おじさ・・」
「新一。てめえは誰のもんだ。言ってみろ」

大河はソファーの背もたれに寄りかかり、大仰に構えて新一の落ち着きの無い目をねめつけた。

「・・・お前は誰のもんだ?」
「・・・」
「言えねえのねら、言わせてやろうか。ここに来い。新一」

大河の言葉には逆らえない。
ビクリと肩を上げた新一は、背後に拓斗を残しそのまま大河の元へとゆっくり一歩を踏み出した。
ソファーに座る大河の前まで来ると、小刻みに手が、肩が、体が震え出し、視線を合わせる怖さに新一は目をつぶった。




「服を脱げ新一」



指示された言葉に慄いて目を開けると、笑みを含んだ大河の目は新一に有無を言わさぬ強い視線を突き刺すように向けていた。

「で、でも・・」
「あいつが気になるのか?・・・あいつともセックスしたんだろう?何を今更貞淑を気取ることがある。見せてやればいい。お前の体を」
「!」


(やっぱり叔父さんにはもう何もかもバレている。俺と拓斗がセックスをした事実も・・・)


だからと言って拓斗の前で全裸になることはやはり恥ずかしくてその場で動けないでいると、大河が拓斗に吐き捨てるような声で命令した。

「おい、お前・・・そこに座れ」

「・・・?」

拓斗も新一もその言葉に驚き、互いの目を見合った。

「何してる早くしろ。伊勢崎」

ドスの利いた叔父さんの声に、立ったままの拓斗は伊勢崎に背中を突かれて、大河が座るソファーの真向かいに座らされた。

「伊勢崎」
「はい」
「準備しろ」
「はい」

その受け答えだけで、伊勢崎は隣の部屋に消えてしまった。
広くて薄暗いリビングに残ったのは向かい合わせにソファーに座る大河と拓斗。そして大河の前に立ったままで動けない新一の3人だけになった。


「脱げ新一。3度は言わねえ」


さっきよりも辛辣な声になった大河が、拓斗を目の前にして命令する。これ以上言うことを聞かなかったらきっと大河は何らかの強硬手段に出るだろう。それが怖くて新一は震える指で衣服に触れた。

半袖のシャツを脱ぐと、細身のまだ大人になりきれていないすべらかな裸体が現れる。ベルトをはずす金属音がやけに大きく聞こえて耳障りだった。ジーンズを脱ぐと白くほっそりとした足が白い下着から延びていて、ひんやりとした外気にふれた太ももがブルリと震えるのが見る者の嗜虐を煽った。

下着に手をかけたところで、チラリと視線を拓斗に向けると、そんな戸惑う新一に大河は下着も脱げと間髪入れずに言った。
せめて拓斗に見えないように尻を向けて、下着を引き下ろし足から抜いた。

「っあ!」

そのとたん、大河に手を引かれそのままその胸に倒れ込むと、くるりと体を仰向けにし、大河の股の間に座らせられた。

「あ・・・・・」

向かい合う拓斗と新一。

裸体の新一を背後から抱え込む大河は、自分の大きく開いた足よりもさらに新一の両膝を広げてその膝に掛け、ペニスが拓斗に曝け出されるようにわざと開脚の体位を取らせた。

「やだ、おじさ・・」
「新一、お前死にてえのか」

「・・・た、大河さん。こんなのやめてよ!」
「おい、拓斗とか言ったな。てめえはそこを動くなよ。今から新一がよがるところをたっぷり見せてやる」

「っ・・・・」

拓斗は拳を握ったままそこから動くことができなかった。

門倉大河という男の鋭い眼に据えられると、何もできなくなってしまうほど今の拓斗は畏怖の念に捕われていた。

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あきゅろす。
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