青春真っ盛りなんだけど(7) (完)


再び覆いかぶさって来た拓斗から手渡された、鳴り続ける携帯電話。そこに表示された名前を見て新一は息が止まった。


(叔父さん!)


こんなにしつこく電話をかけて来る相手は大河しかいない。1時間ほど前に別れたばかりなのに、一体何の用事があると言うのだろう。
新一の足を抱え上げて尻の穴に指を当てた拓斗は、下からニヤリと意地悪な笑みを見せて再び指を挿入した。


「ん・・・っぁ・・・」


(こいつ、人の体で完全に俺で遊んでやがる。)


「なあ・・・・あ、ちょ、拓斗、今そんなことす・・・・な、ゆ、指・・・・・・抜け!」
「俺の指もグイグイ締め付けてる・・・ああ、早くここに挿れてえなぁ〜」

拓斗は突っ込んだ指で、窄まった括約筋を広げるようにしてほぐし始めた。

「ピーピーうるさいから早く電話出ろよ、出ねえならもう電源切れ」
「っ・・・そ・・んな、あっ・・・」

電話に出ないわけにはいかなかった。
新一が寮に帰り着いたことは分かっているのだから、新一が電話に出るまでは何時になろうと大河はかけ続けるはずだ。電源を切ったりしたら・・・今度会った時、何をされるか分からない。
やめろと言っても拓斗は面白がって穴をいじる行為を止めないし、電話はいつまでも鳴り続けるし。


(ああーーー!!もう、拓斗も大河さんも何なんだよ!)



プチ。


通話ボタンを押して、恐る恐る相手の声を待つ。



『・・・新一。何でさっき切った。それに何でもっと早く出ねえ』



電話の向こうの叔父さんの声は、いつも聞く声より少しトーンが下がっているように感じた。怒る前の、または怒っているときのそれに近い。そんな声にビクビクしながら、新一は答えた。

「・・・ご、ごめんなさい」
『お前、今何してる』
「え・・・・何って・・・んっぁ」
『・・・・・どうした?』
「・・・な・・・・ぁ・・・何でも、ない」

妙な声を上げてしまった。大河におかしく思われないか、新一は気が気でならなかった。

『・・・・・・・・・・そうか』
「・・・っぅ・・・・・・うん」

(ん・・・あぁ、や・・・た、拓斗・・・・そこ、やめろ、まずいって・・・・ぁ・・)

拓斗がイイ所を引っ掻くたびに、ビリビリとした快感が背筋を駆け上がる。気持ちよさがさざ波のように寄せて来る。尻の中の気持ちがいい部分から、体の端々に向かって微弱な快感の波が寄せては消え、そして広がって行った。

『新一・・・』
「・・・っ、な何?」
『何か俺に隠してることはねえか』
「え!」

携帯から聞こえる声は、やはり怒りをはらんだときの声に聞こえる。それは自分が後ろめたいことをしているからそう感じるのかもしれない。
“隠し事”・・・今はまさにその隠し事の真っ最中。
まるでその一部始終を大河に見られているような気分になった新一は、不安な気持ちを押さえられなかった。だが、あそこが・・・気持ちいい・・・
こんな不安な中でも、感じてしまう自分が恥ずかしい。

(電話の向こうには叔父さんが・・・大河さんが居るって言うのに。)

新一は拓斗に触れられているのに、まるで大河にも同時に尻を犯されているような錯覚に捕われた。

(あ・・・拓斗・・・そこ・・・・擦らないで・・・・くれ・・・・・でも・・・でも・・・・・・・・イイ・・・・ああ・・・大河・・・さ・・・)

新一の前立腺を面白がるように拓斗が擦る。ここをこすれば新一は女みたいに腰を震わせて悦ぶ。そうなった新一を陥落するのは簡単だった。
新一は快感に弱い。だからわざと執拗に拓斗はそこを擦った。



「・・あ・・・・っ・・・・・・・ぅぅ」
『新一・・・』
「な・・・・。何・・・・おじ・・・・・た・・・いが・・・・・さん」

気持ちよくて、乱れてしまいそうな自分を押さえながら、新一は必死に大河との受け答えに意識を集中させた。



『新一・・・・・・・・・・尻に指突っ込まれて、そんなに気持ちがいいのか』



「なっ!!」




(・・・・叔父さんは今・・・・・・・・・・・今、何て・・・・・・・・・・)




携帯を持つ手が震えていた。
首を動かして部屋の中に視線を巡らすが、この部屋には自分と拓斗しかいない。当たり前だ。部屋の鍵もちゃんと閉めた。ならば、何故この状況が、尻に指を挿入されているような状況が大河に分かるのだろうか。

『イイとこ擦ってもらってんだろ新一?気持ち良さそうに喘ぎやがって』
「っ・・・・・・」


(何で・・そんなことまで・・・・分かるんだ)


『水曜はSEXの日だってなあ?俺は初耳だぜ』
「ぁっ・・・・・・」


(全部・・・全部知ってる!叔父さんに・・・・・・・・ばれてる!)




「どうした?新一」

新一の電話の様子がおかしい。それに気付いた拓斗が新一の上にずり上がって来た。

『そいつに変われ、新一』



唇をガクガク震わせて、新一は真上から自分を見降ろす拓斗に携帯を差し向けた。

「あ・・・・たく・・・・たくと・・・・・・拓斗・・・・あ・・・ぁ」
「んあ?何言ってんだ新一?」

自分に携帯を差し出す新一をいぶかしく見降ろしながら、光る携帯の画面にまだ通話中だと言うことを知る。何が言いたいのか分からないが、差し出す携帯に黙って耳を当てた。

――― 数秒の無言。

だが電話の向こうには間違いなく誰かがいる。その見えぬ相手の気配を拓斗は感じ取った。耳に触れる携帯が小刻みに震えているのは、新一の手が震えているからだ。拓斗は何かに怯えるような目で自分を見る新一の震える手ごと、携帯を握りしめて耳をすませた。



『・・・新一を抱いて気持ちよかったか』


「っ・・・・!」

低く地を這うような声と、言われたセリフに拓斗に衝撃が走る。



『熱くて蕩けそうで・・・早く入りたくてたまらないんだろう。新一の尻に・・・』



耳が凍りついた。それは自分が新一に言った言葉、そのものだった。



『あいつの中は、・・・・・くくっ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最高だろう』



全てを知っているとでも言うような言葉に、拓斗は何も言えず新一と視線を合わせた。その新一の顔は、かわいそうなくらい青ざめていた。



『人のモンに手ぇ出しやがって、それなりの覚悟があってやってんだろうなあ』



電話の向こうでしゃべる男は、まるで見ていたかのように2人の情交を示唆した。

(これは・・・新一の相手の男か!俺達のことがばれてる、でもなぜ。新一とSEXしてからまだ3日しか経っていないんだぞ!なのになんで・・・)

拓斗はわけがわからず困惑し、自分達しか知らないことを話す男に恐怖を抱いた。



『・・・首洗って待ってろ』



その言葉を最後に携帯はプツリと切れた。





そしてその数秒後、

ピピピピ・・



拓斗の手の中で、静寂を破った携帯が耳障りなほどに鳴り響いた。ベッドの上で固まっていた2人の体がビクリと動き、その視線は携帯に釘付けになった。
そして直ぐに止んだ音にそれがメールであったことを知る。

「た・・・・たく・・・・手・・・」

完全に血の気が下がった、青白い顔をした新一の震える声に、拓斗は金縛りに遭ったように動かなかった体をぎくしゃくと動かし、拘束していた片腕をほどいた。
新一はズボンを履き慌てて身なりを整えてから、窓のカーテンをすぐに閉めに行った。それを見た拓斗も部屋のドアまで行き、ドアのかぎが掛かっていることを確認した後、トイレと洗面所の中を見てクローゼットの中やベッドの下まで確認した。

しかし、この部屋に居るのはやっぱり自分達2人だけだった。




「どういうことだ・・・新一」

始めにしゃべったのは拓斗だった。

「・・・わ・・・分からない」
「分からないじゃないだろう。あいつは一体何者なんだ!」

怒りと恐怖に入り乱れた拓斗は、新一に向かって怒鳴り声を上げた。新一はパニックに陥りそうな頭で、もう一度部屋の中を見まわした。そして・・・

「・・・・・・・ま・・・さか」

はっとした新一はソファーに駆け寄り、自分のカバンの中身をテーブルにぶちまけた。

財布にゲーム、ハンカチとガム。いつも自分が持ち歩いている物しかカバンからは出てこなかった。もう一度空になったカバンの中を確認したが、中身はやはりすっからかん。新一が想像したような不審な物は何もなく、中敷きが残っているだけだった。

中敷きだけ・・・。


ガサッ


新一はその黒い中敷きを裏返した。



カバンの底には黒くて薄いカードが一枚入っていた。
厚さ5ミリ程度のプラスチックのカードはトランプと同じくらいのサイズだ。しかしこんな物は見たことが無かった。自分の物ではない物。そんな妙な物が何故こんなところにあるのだろうか。

「何だ、それ」
「・・・・・俺のじゃ・・ない・・・・・・・こんなの知らない・・」
「まさか・・・それって」

ゴクリとつばを飲み込む。
互いに顔を見合わせて、もうそれ以上会話ができなかった。
おそらくこれは・・・・・



新一は思い出したようにベッドの上の携帯を取り、さっき届いたメールを開いた。
送信者は・・・・伊勢崎だった。


『明日9時にお迎えに上がります。2人とも宿泊届を出しておいてください。逃亡した場合ご友人の安否は保証しかねます。今日は早くお休みになってください』


伊勢崎からのメールを見て、新一は更にどん底に突き落とされた。
地面がぐらついてまともに立っていられずそのまま床に崩れ落ちる。

「新一・・・」

新一の手から転げ落ちた携帯を拾った拓斗は、メールを読んで驚愕に目を見開いた。

「な・・・・何だよ・・これは・・・」

一方的な指示。命令するようなその内容に、拓斗は恐怖を一瞬忘れて激怒した。

「何だよコレは!逃げるなとかって・・・・・・・・・新一あいつは一体、・・」
「拓斗だめだ!」


(それ以上しゃべるな!!)


自分の口に人差し指を当てた新一を見て、拓斗はさっきの黒いプラスチックのカードに目をやる。



あれはおそらく・・・盗聴器。


なんでこんなものが新一のカバンに。
こんな物、普通の生活をしている人間なら、一生目にする代物ではない。

青ざめて何も話さなくなった新一。
怒りと不安で固まったままの拓斗。

2人は互いのベッドに座り込み、寝ることもできずにただ長い夜を黙って過ごした。


END


ご愛読ありがとうございました。「青春真っ盛りなんだけど」は全7話で終了です。
次はいよいよSEXした事がばれた新一と拓斗がお仕置きされる番です。楽しみだね。こちらの再開は2013年です。

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