裸体鑑賞 ※
シャワーを浴びて下着を付けずに白いバスローブを羽織った。そうしろと言われたから。ソファーに座ると体が沈み込む。背もたれに寄りかかり、浴室から聞こえる水音だけが耳に音を運ぶ。




――――― アーク・ヒルホテル 1205室




昨日は一睡もできなかった。今から始まる淫猥な行為。
言うことを聞けば画像は全て消去すると奴は言った。そんな口約束を全面的に信じているわけは無いけど、そうするしか俺に選択肢は無かった。

広いガラス窓から真昼の日差しが明々と室内を照らす。その強い日差しは自分の過ちを非難するかのようにこの身に突き刺さる。まだ時刻は正午過ぎ。昼間からこんな行為に身を投じるのも、不道徳な気がしてならない。男と寝ることがすでに道徳規範からはみ出しているのだけど。
リモコンのボタンを推すと自動で電動カーテンが閉まる。遮光カーテンが全て引かれると、室内は薄暗くなり少しだけ気分が落ち着くような気がした。



「カーテンを開けろ」
「!」

いつの間にかシャワーから上がったあいつが、同じくバスローブを着て立っていた。

「閉めたらせっかくのきれいな体が見えないだろう。明るい日の下でお前を鑑賞するのも今日の楽しみの一つだからな」

(このクソエロ変態!!)

リモコンを床に叩き付けたくなる衝動を抑え、言われたとおりにボタンを押しカーテンを開ける。ウイーンと低い機械音が鳴り、カーテンは元の位置に戻り再び部屋を明るく照らす。



この部屋に来たときの約束。

画像は全て消すが、一切抵抗しないこと。



腹をくくった。
犬に噛まれたと思えば。
身近にそういうことをしている人間がいるから耐性はついているつもりだ。
学校じゃ男とやってる奴だって多いし。
合意じゃなくて、無理矢理犯られた奴だっている。
女じゃないから、キズモノとか思わないし。


こんなこと、別にどうってことない。


そう自分に言い聞かせないと、男とのSEXを受け入れるなんて到底無理だった。




『先輩とのSEX?気持ちいいよ。好きだからするに決まってんじゃん。ノンケの夕輝にアレで得られる刺激は一生分からないよ』

薫の言葉が脳裏に浮かぶ。気持ちいいとか、たまんないとか、女よりもいいとかイれる時より抜く時の方がイイとか・・・でもそれって犯る側の人間の意見じゃないのか?あれ?ってことは薫って・・・・どっちだ?普段の薫を想像するとあれがタチってことあり得るのかと考える。ムキムキ筋肉相手ならネコだろと。でも自分とそう変わらない体型の薫だ。SEXフレンドの中にはかわいい系美少年もいたよな。性格的には十分タチなんだろうけど顔は・・・・・・・うーん・・・・・・・・・・・分からん。



「さて、まずは鑑賞会だ。ここへ来い」



現実逃避で妙な事を考えていた。

キングサイズのベッドに膝を組んで座る男は、俺をベッドの脇に呼びつけた。



「脱げ」
「・・・」



真っ昼間からこの明るい部屋で、正面に座る男に裸体を晒す恥ずかしさに、拳をギュッと握りしめて立ちつくす。

「言うこと・・聞くんだろ」

ここでは抵抗しないと約束をした。言うことに従うと。分かってはいたものの、無性に怒りが沸く。

「てめぇは・・・」
「名前で呼べ」
「ケッ、冗談だろ」
「命令だ・・・夕輝」

冷たく言い放つ言葉に目線を会わせると、目は笑っているがいつものふざけたような雰囲気が感じられない。瞳の奥が・・・暗い。
ゾッとして背筋に緊張が走る。


「呼べ」



「・・・・じん・・・」

「いい子だ」

視線を反らして呼びたくも無い名前を始めてつぶやく。そんな言い方でも言うとおりにしかできない俺を見て奴は満足していた。

「脱げ」

言葉が心に重くのしかかる。いったいどこまで俺を縛るつもりなのか。




バスローブのひもに手を掛けほどく。襟をつかみ左右に開き右の袖から腕を抜き、左手は通したまま腹の前でローブをたくし持ち、股間の部分を隠すが、その仕草が女みたいに女々しく感じ、思い切ってローブを投げ捨てた。


まとう物がなくなり、光の下に晒される若い裸体。


均整のとれた細身の体。腹筋は割れていないが、みぞおちからへそにかけて縦に筋腺が一筋通っている。健康的で艶やかな肌はあまり日に焼けていない。胸には小さな乳首がピンク色にチョコンと花を咲かせている。四肢は細く長いが二の腕に筋肉が少しあるのが、何かスポーツをしていたことを告げている。手首が細く、指も長い。腕や手の甲に筋が浮かび上がっている。もう少し太らせたいくらいだ。体の中心には、男の印。薄い茂みの向こうに、肌よりすこし赤味がかった小ぶりな肉茎が隠れるようにひっそりと存在してあった。


理想的な肉体だ。

切れ長の整った顔は始めて見た時から好みであったし、性格はまっすぐなのにぶっきらぼうできかん気なのが征服欲を掻き立てる。ノンケ相手に無理矢理押し倒すのがまたたまらない。
面倒なことは嫌だったので、子どもには手を出さないようにしていたのに。高校生を相手にするなど何年ぶりだろうか。仁が子どもを相手にするなど、周りが知ったら趣向が変わったのか?と驚くだろう。

しかし夕輝は別格。

ここまで条件にピッタリの獲物も久しぶりだ。触手が動かないわけがない。



「いい体だ。何かスポーツをしていたのか」

座ったまま夕輝の体に手を伸ばし、胸に咲く小さな花に触れた。

「っ・・」

薄く色づく乳輪を指でくすぐるようにグルグルなぞり、中心の突起を捕らえると人差し指の腹で押し付けるようにグチグチと乳首をつぶす。何をしていたと聞かれ答えなければ乳首をつまみ上げられ引っ張られる。痛みにのどの奥でくっと鳴る声を必死に抑え我慢した。

「中学の・・とき、バスケ・・・」

知りたいことを聞き出すと乳首を摘む指は離れ、みぞおちの筋腺をたどってへその下で指が止まった。


「両手を俺の肩に乗せろ」

言われた通りに男の顔をはさむように肩に手を置く。
仁の顔の前に、夕輝の体の中心が差し出されたような体制。フッと笑った奴の吐息が、薄い茂みにかかる。足を開けと言い奴の膝をまたぐように足を左右に広げると、両手が背中に伸び、背筋を指が這いずった。ゾクッとして肩を握っている手に力がこもる。奴の手はそのまま尻をまざくり、薄く付いた肉に指を食い込ませギュギュッと何度ももむ。そして掴んだ尻肉を左右に割ると、最奥の秘所が空気に触れ、冷たさを感じた。

秘所に指が伸びる。

「な!!」



他人の指が、自分でも触ったことの無い場所にたどりつき、穴をグリッと押した。

「っく・・・」

握った肩を押しやり、体を後ろに引いたが掴んだ尻を引き寄せられ前のめりに倒れそうになる。片膝をベッドに付くことで持ちこたえたが仁に抱きつくような体制になってしまい、離れようとすると、尻を触っていた手に背中を抱かれ引き寄せられた。
もう一方の手は尻のすぼみの弾力を確かめるように押し、肉ひだをこすりながらなぞっっていた。


「小さいな・・・初めてだろう。今日はたっぷりほぐしてやる」


地の底へ突き落とされたような絶望感。


男同士のSEXは尻の穴を使う。知識では知っていても自分には一生係わり合いの無いことだと思っていた。なのに今そこを触られ、交わることを宣告された。

「っ・・・・・く・・そっ・・・」



仁の肩越しに見える広いガラス張りの窓の外は、やわらかい秋の日差しが降り注ぎ、薄い色をした青空が広がっている。いつもと変わらぬ平穏な日常がそこにはあった。


でも、俺は・・・




ガラス一枚隔てたこの部屋では、男同士の淫猥な交わりが始まろうとしていた。

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