偶然は必然
合コンで気の合った女子と会う約束をした。映画に行ってご飯を食べて、その日のうちに家に呼ばれて「今日親いないの」と色気全開で迫られれば、男としては据え膳食わねばなんとやらだ。最近の女子の貞操観念の軽さはどうなんだ?会って2回目の俺といきなりSEXしていいのかと一応する前に聞いてみる。



「だって鹿嶋君、みんな狙ってるんだもん。かっこいいしクールところがたまんないって。レベル高いんだから」



連れて歩くなら周りの女が振り返るくらいかっこいい男がいい。性格もさっぱりしていて“俺の女”扱いもしない。優しくて多少のわがままも聞いてくれる。草食系じゃなくてどこか危ない雰囲気を併せ持ったような彼がいい。夕輝はそれらの点で合格点をもらえる貴重な男らしい。

彼女が服を率先して脱ぐので、夕輝も合わせてシャツを脱ぐ。夕輝の体は中学でバスケをして以来、高校ではスポーツもしていないのに無駄な肉もなく引き締まり、腹には縦に線が入っている。しなやかな肉体は色気に満ち、女の方が見とれている。

「鹿嶋君の体って・・・・・・・なんか・・・きれい」
「は?普通だろ」
「ううん。見とれちゃう。くやしいな」

彼女の腕が首に回り、豊満な乳房が夕輝の平らな胸に当たりそして口づける。大して時間のかからないありきたりのSEX。キスをして、乳房をまざくり乳首にも軽くキスをして吸い上げる。そして陰部を指でなぞり濡れたら勃ち上がった自分にコンドームを付けて挿入する。別段変わったことは何もない。前戯とかテクもそんなに持ち合わせていないが、それで文句を言われたこともない。



SEXは1ヶ月ぶりだった。前の彼女と別れてから体を合わせるほど親密な相手は作らなかったから。そんなに飢えてもいないし、今日だって誘われたからしただけ。しばらくはこの子と付き合うのかもしれない。どうせ長くは持たないのだろうけど。
夕輝はSEXもタンパクだが、深みにもはまらない。初めは顔で選んだ夕輝に夢中な彼女達だが、自分に全く執着しない夕輝に腹が立ち以外と早く分かれてしまうのだ。俺の物扱いはいやがるくせに夕輝には執着してもらいたい。ずいぶん勝手な話だ。だからこそ、そんな夕輝を本気にさせる女が自分かもしれないと、やっきになって夕輝の彼女の座に着きたがる女が後を絶たない。そんなことで夕輝も女に不自由はしたことがない。お互いをうまく利用し合っているということだ。






「ねえ、夕輝。今日僕の家に寄らない?」
「何で」

今日も結局薫と帰る。あれ以来別々に帰ろうと思ったがその行動自体が変だと思われるかもしれないと二の足を踏み、思い切った行動に出ることが出来ない。

「だって夕輝新しい彼女出来てから付き合い悪いんだもん」
「仕方ねえだろ。会えってうるせえんだから」
「夕輝ってフェミニストだよね。名前なんてーの?」
「・・・・まゆ」
「ふーん。かわいいんだ」
「ふつー」
「夕輝は来る者拒まないよね」
「変な言い方すんなよ」

薫は自分が夕輝と過ごす時間が減ったものだから、最近ご機嫌斜めだ。自分は好みの男と好きなだけ遊んでいるというのに、夕輝に何かがくっついているのは許せないのだ。口をとがらせてすねる薫にまいったなと、頭をポリポリかきながら断る理由を考えていると向こうから車が・・・・あれは・・・


げ、変態!じゃなくて・・・薫の兄貴!!


偶然も2度続けば必然だ。この野郎またわざと待ち伏せしてやがったな。車からはあのイケメン兄貴が現れて薫と何やら話を始めた。そして俺はまた有無を言わさず車の中に引っ張り込まれた。ただし今回俺を引っ張り込んだのは兄ではなく薫だ。

「丁度仁も通りかかったし、家に寄ってよね、夕輝」




丁度なわけないだろう。見てみろあいつのシニカルな笑い。絶対何かよからぬことを考えてる。薫が「おーねーがーい」と、後部座席で俺を押し倒す勢いで迫ってくる。こいつの笑みもなんとなくあの兄貴に似ている。そりゃそうか兄弟だもんな。しかし・・・・・そうだな・・・薫もいるんだから、変なことはしないよな・・・・・・・・・・・・・・・するわけないよな。くそぅ・・・仕方ない。ちょっとだけ寄って早く帰ろう。





高槻家に着き何をしたかと言えば、薫の部屋でDVDを見てゲームをして2時間くらいいたかな。その間兄貴が顔を出すこともなかったので気が緩んでいたのかもしれない。6時を回り夕食も一緒にと言われたがさすがにそれは断り、帰ろうとしたとき嫌な予感は当たった。



「夕輝。仁が送ってくれるって」

薫のその言葉に忘れかけていた記憶がよみがえる。薫め、よけいなことを。「薫から丁寧に断っておいてくれ、俺は歩いて帰る」と言うが「遅くなると危ないから乗って行け」としつこく言われてしまう。夜道よりもこいつの車の方がよほど危険度が高い。ここは玄関を出たら走ってさようならするしかない。

そんな俺の行動などお見通しなのか、玄関を出たところであっさりと腕を捕まれあえなく助手席へと導かれる。

「変に騒ぐと薫が不審がるぞ。いらぬ詮索をされたいのなら話は別だが」

耳打ちされギロリと視線を合わせるが、奴は軽くフンと鼻を鳴らし俺を押し込め助手席のドアを閉めた。

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あきゅろす。
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