玄関で災難(1)
なぜ、こんな事態に陥っているのだろう。

友達の家の玄関で、

俺は今、



知らない男にアソコをいじられている・・・・・・・






同級生の薫が風邪をこじらせ学校を休んで3日が経つ。担任に頼まれてたまったプリントを届けに来たのだが、初めて訪れた薫の家は、うちの小さくて安いマンションと同じくらいのでかさの豪邸だった。

友達の名は高槻 薫(たかつき かおる)――――名前も品があり値段が高そうだ。

チャイムを鳴らし30秒は経つ。そんなに廊下が長いのかこの家は。そろそろ着くぞと携帯からもメールをしたのに一向に扉が開かない。そういえばメールの返事が返ってきていないからもしかして寝てるのかもしれない。仕方がない郵便受けにでも入れて帰るかと、封筒をカバンから出したとき、門の前にこれまた高そうな車が止まった。


うわっ・・・イケメン・・・


車から出てきたのはスーツ姿の長身の男。バタンとドアを閉めてこちらに向かって歩いてくるだけなのに、すごい存在感を放っている。長い足で優雅に歩くその姿に目を奪われていたが、それは声をかけられたことで現実へと引き戻された。


「なんだ、お前は」


「なんだ」ってなんだ。不遜な態度で投げかけられた言葉に、ムッとする。俺だってここに居たくて居るわけじゃない。
それに上からジロジロと見下ろされているのも気に入らない。俺は173cmで高校2年の平均身長を3cmも上回っている。よって学校では背が高い部類に入っている。なのに目の前の偉そうな男はその俺を軽く10cmは越す長身で俺を見下ろす。
しかも顔もムカつく。いやみなくらい整った顔。普段イケメンといえる男を見慣れている俺だが、そいつと同じくらいのイケてるレベルだ。だが人は顔だけじゃない。きれいな顔には棘があるじゃないけど、こういう顔をした連中はろくなことがないから近づくなと、俺の自称保護者と名乗る人は常々言っている。その保護者自体が嫌なくらいイケメンなので説得力に欠けるのだが、まあ、あいつは例外と言うことでよしとしよう。

「なにか、用か」

そう言って、男がインターフォンに付属してあるボタンを押すとロックが外れる音がする。鍵が開き大きな扉が開く。
鍵を開けるくらいだからきっとこの家の人間なんだろうなと思い、手に持っていた封筒を男に向かって突き出した。

「これ、担任に頼まれた。じゃ」



それだけ言ってきびすを返し去ろうとしたのに、ムズっと二の腕をつかまれ、これまた広い玄関の中に引きずり込まれた。
急になんてことすんだこいつは。ガッチリ掴んだ手は大きく、俺を易々と引きずり込んだことにも腹が立ち、なかなか離れない手の主を睨みつけた。

「何だよ!」
「お前、薫の友達か」

薫という名前を聞いて怒っていた気持ちが少し引いた。そうだ俺プリント届けに来ただけなんだ。こんなところでイチャモン付け合ってる場合じゃない。

「これ、放してくれます」

掴まれた腕に目線をやり、痛いんですけどと目で訴えながら睨み続けた。下からだけど。

「俺の質問に答えるのが先だ。お前名前は?」
「人に名前聞くなら、まずそっちが名のるべきなんじゃないですかね」

敬語なんて使いたくなかったが、もしかして薫の関係者かもしれないと思うと、そうも足蹴には出来ない。しかし見下されているような感じがぬぐえないので、攻撃的な口調でめいいっぱい皮肉っぽく言ってしまった。だってこいつは嫌な奴とすでに頭の中にはインプットされていたからだ。


「フッ・・顔も好みだが、その口も気に入った」


ドンッとドアに背を押し付けられたかと思うと、男が顔を近づけてきた。な、何だこいつは!口に生暖かい吐息が触れ、ムニっとしたものが強引に押し当てられた。

(げ・・・げえーーーキ・・・キスぅーー)

見知らぬ男に口をふさがれている。しかも友達の家の玄関で。




必死にあがらうが、掴まれた両腕の拘束は解けず口の中に舌まで侵入してきた。

「ぬ、やめ、・・」

否定の声も絡めとられる。自分も女の子とキスを何度も経験したが、それとは全く違う激しい口付けに経験の違いをまざまざと感じさせられる。
口内を自由にうごめく舌。その舌を追い出そうと抵抗すると、逆に吸い上げられ舌を舐られる。チュルジュルとわざと音を立てているんじゃないかと思えるほどに、湿った音が大きく鳴る。

(こいつ・・・う、上手い)

相手のキスに翻弄されるなんて初めてだ。大体キスは女の子としかしたことがない。一般的にはそうだろう。どんなキスをすれば女の子が喜ぶのか、それは自分も考えたことがある。経験するたびにテクニックを上げてきたつもりだが・・・この男、すごすぎる。


目の前が朦朧とする。たかがキスひとつで。


白いのど元があらわになるほど上を向かされ、落とされる口付けに体が震えて力が抜けそうになると、男は俺の両足の間に自分の膝を割り入れ、体を密着させてきた。

「さっきの威勢はどうした、もうギブアップか」

離れた口から出た言葉は、またもやいやみな言葉。こんな男にキスされて上手いとか感じたおれ自身にも腹が立った。

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