包帯
鷹耶さんもそんな僕を不機嫌そうに見返していたが・・・あれ?



だんだんと鷹耶の眉にしわが深くなっていく。
キスしようとする前のちょっと怒ってはいたけれど、幾分柔らかくなったと思っていた表情は影をひそめ、僕を直視していた目は怒りに染まって行く。

ど、どうした?

こ・・・怖い・・・

口の端が震えてくる。
今までも叱られて怖いと感じることが何度かあったが、今目の前にいる鷹耶は怒気を隠そうともせず、震える静を捕らえていた。

こんな鷹耶さんは初めてだ。でも何で?
遅れたことがそんなにいけない事だったのだろうか。
それともキスを拒んだ事だろうか。




鷹耶がこんなにも怒っている理由が分からず、どうしていいか戸惑っている静の手に鷹耶の手が触れた。



ーーー静の包帯を巻いた手に。


「これは・・・何だ」




これ?

静は自分の包帯を巻いた手を見る。

げ、しまった!!



キスを防ぐために目の前に出してしまった包帯に包まれた手首を鷹耶は掴み凝視している。

「何だと聞いている」

「・・・・・」

いきなり機嫌が急降下したのは、コレが原因らしい。

言い訳を考えている途中だったのに急に鷹耶が現れて、怪我のことなど完全に失念していた。




「あーーーーっとね。これはですね・・・    ・・・・     ・・・・こけた」

包帯を穴が開くほどに見ていた鷹耶は、僕の言葉を聞くなリなんと包帯を解き始めた。


「ち、ちょっと、鷹耶さん。なんで解くの、痛いってば!」

クルクルと手際よく包帯を外し、傷口に貼っていたガーゼもペリペリとはがされる。

「っ、いた!」

ガーゼの下に現れたのは、手の甲に斜めに走る、赤く紫がかり少し腫れた切り傷。
まだ新しい切り傷は、真ん中のあたりがパックリ割れて血をにじませ痛々しい。



「こ、、    こ、、、    こけたら、、    切れた・・・」

最後の方は我ながらよく声に出せたと思う。
言い訳の内容としてはアホなほど最悪だけど・・・



「いつ怪我した」

地を這うような声で言わなくても・・・・・・怖い。

鷹耶に握られた手が震え出した。
止めようと思っても自分の意思に反して小さく震え続ける。

言わないと・・・きっと、もっと怒る!

「き、、昨日」
「昨日のいつ」

「よ、夜」
「夜の何時」

「じゅう・・・」

そこまで言って生唾をゴクンと飲む。
うちの門限6時ーーーーーーーーーーーーーーー!!

ハッと顔を上げて鷹耶を見ると・・・苛立ちを隠しもせず憤激した鷹耶さんが、僕の痛む手の指先をギュッと握りしめて言った。



「病院に行くぞ」

「・・ん・・・」

僕の肩に手を添えかばうように歩く鷹耶さんは、車に着くまで黙ったままだった。
沈黙が怖い。




車に乗せられると、いつからそこにいたのか、この前の苦手な秘書さんが助手席に乗り込んで来た。


鷹耶さんの会社の近くにある病院に向かう車の中で、僕は昨日のことを問いただされた。

[←][→]

13/47ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!