追いかけっこの末に
追いかけっこ・・という言い方が適切かどうかはこの際いいとして、追われているのは確かなので。
うん、まあ、と正直に答える。
「なにか、悪いことしたのか」
「全然!あいつらがいきなり追いかけて来たから」
「なるほど。ならいい、分かった」
何が分かったって?と聞く前に、手を引っ張られ、2軒隣にある、店の中に押し込まれる。
「いらっしゃ・・ ・・あら、天」
店内には女の人が1人、カウンターでたばこをふかしていた。
「わりぃ! ちょっとこの子預かっといて」
「え、いきなり何、天。どういう、、」
外に出るなよと一言残し、あっけにとられた僕たちを残して天と呼ばれた人はすぐに出て行った。
そういえばはま路の大女将が「天(てん)」って、呼んでいたな。
天が外に出ると数人の男たちが、通りを占拠し辺りを見回し探せ!と怒鳴っている。
天は素知らぬ顔で店の前の道まで出てその場に突っ立っていると、息を切らした男の1人が突っかかって来た。
「おい、お前、今ここに眼鏡をかけた女みたいな子供が逃げてこなかったか」
ああ、やっぱり。
あの子は何でこんなのに追われているんだか。
答えず黙っている天が気に喰わなかった男は、天の胸倉を乱暴につかみ上げ罵声を浴びせかけている。
店のカーテンの隙間から見つからないように、静と店の女の人はハラハラしながらその様子を見ている。
「くぉら、何気取ってんだてめえ」
「あああ、、、、、す、、すいませぇ〜ん。僕はそんな子見てませんから・・・」
天は震える声で、殴りかかろうとする男に詫びている。
すいませんを繰り返す天の、自分を怖がる態度に気を良くした男は、乱暴に天の胸倉を突き離し、その勢いで天の体は壁に強くぶつかった。
「あいたたたあぁあ」
情けない声を出す天にケッと舌打ちをし、男は他の仲間と合流して、静を追って、夜の街に消えていった。
しばらくその場に立ち尽くしていた天は、男たちの気配が完全に消えたのを確かめてから、店内に引き返した。
「天さん!!」
入って来た天に駆け寄った静は、自分のせいで天を危険な目に会わせてしまったことを謝った。
「ごめんなさい。天さん、僕のせいで」
「気にするなって」
ははは、とおどけて笑う天に店の女性も賛同する。
「いいのよ、この人厄介事持ち込むの好きだから」
と、真っ赤な口紅を引き上げて妖艶に笑う。
お姉さんをよく見ると、胸元が大きく割れ、スリットが深く入ってかなり・・・Hな格好だ。
僕には刺激が強すぎて、顔が赤くなる。
「やだ、この子、かわいい〜」
僕の顔を覗き込みいたずらしたいわと頬を手で挟み込まれた。
「お姉さんがイイコトしてあげようか」
お姉さんの顔が迫ってくる。
ぎえ==!!!
「おい、こら、静ちゃんで遊ぶな」
お姉さんの手をパシッとはたき落した天さんはお姉さんが触ったところを自分の手でゴシゴシ軽くこすった。
「なにしてんのよ、天」
ああ〜あのお姉さん触り魔だからごめんな〜嫌だったね〜と僕に構う天さんに向かって、お姉さんは不機嫌丸出しで聞く。
「お前が触ると、なんか・・・・ ・・・・ 静ちゃんが汚れたような気がする」
だからゴシゴシ・・・
ラウンジのクッションが、天さんの顔に見事ヒットした。
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