補導
パトカーって、意外と乗り心地いいんだ。思っていたより座席は柔らくて、運転する人もさすがだな〜安全運転だ。とても乗り心地が・・・


いやいや・・・・何考えてるんだ、落ちつけ僕・・・


落ちつく・・・


落ちつけって・・・?




落ちついていられるか=============!!!!!!!!!!!



ビリヤード店が不審な集団がトラブルを起こしそうだと警察に電話し、やって来た警察官に補導されたエンペラー4人と逃げそこなったナイトヘッド数名。


あまりの衝撃の結末に、僕は目の前が真っ暗になり、今も打ちひしがれている最中だ。




そう、僕は今、、、、、、、警察署にいる。








「おい、お迎えが来たぞ」

警察官に声をかけられた仲間が1人、母親?と思われる人と一緒に帰っていく。

「しず姫、本当にごめん。こんなことになって」


迎えが来て先に帰ることと、今日の事件に遭ってしまったことを詫びながら、母親に引っ張られ頭を叩かれている。

「くおら、ばばあ、うぜえ、引っ張んじゃねーよ、俺はまだダチと話してんだよ」
「あんた何べん警察にお世話になれば気が済むの、恥ずかしいったらありゃしない。今度捕ったら引き取ってやらないからね」

署内に響きわたる親子喧嘩に、警察の人もまあまあお母さんとなだめたり、逆らう息子を注意したり警察も大変だなと思う。


はあ・・・でももっと大変なのは・・・・・
僕・・・?




「名前は」
「・・・」
「しず姫って呼ばれてたけど・・・・女の子かな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・男です」
「えっ!そうなの。うん。男の子ね。それで、名前は?」
「・・・・・・」
「年は」
「・・」
「住所と連絡先を言って」
「・・・・・・・・・・」
「学校は何処かな」
「・・・・・・・」
「おい、こら、黙ったままじゃ何も分からんだろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


名前も、住所も、電話番号も学校名も・・・・言えるわけがない。
補導されたなんて、今でも信じられないって言うのに。もしもばれたら大変な事になる。
僕は下を向いたまま解けかけの包帯を巻いた手をギュッと握って、警察官の質問を聞きながら、何かいい方法は無いかと考えている。


「困ったな〜ちっちゃい子じゃないんだからダンマリは無いだろう。君の所だけだよ、保護者と連絡がつかないのは。帰れなくていいのか」


保護者に連絡。そんなこと・・・・そんな事ができてたら最初にやってるよ!!
静は黙秘を貫いていた。




代々木警察署に補導された4人は、初めは11時以降の夜間徘徊の補導という形で生活安全課に連れてこられた。
その後お互いの事情聴取でナイトヘッドとのケンカの事実がばれて、暴力事件という形で調書を取られた。
リンチを受けたとケンタ達は訴えたが、逃げるためとはいえ先に殴りかかったのは僕達で、加害の区別がはっきり付かないと言われた。

ただし、僕達が店から連れ出されたのをビリヤードの客が見ていたことと、ほぼ一方的に集団リンチを受けた形跡が全員にあったことで、加害者寄りの立場にはなっているようだった。

ケンタ達は補導歴があり、すぐに親と連絡がついたので警察に散々絞られた後、保護者共々、監督責任の厳重注意を受け帰って行った。
僕は初めての補導だったので、普通なら注意を受けて帰宅できるはずだったのだけど、


「君たちは集団で暴行を受け怪我もしているわけだから、被害者としては相手を訴えることができる。君は未成年だからおうちの人とその辺のことをきちんと話さないと」

「でも、ただのケンカだし。訴えるとかそんなこと・・・」


そんな大げさな。
暴行事件とか、被害者とか、訴えるとか、日常では言われることのない言葉を投げかけられて、自分が置かれている立場がまるで何か犯罪を犯した者のようにさえ思えてくる。
静達がただケンカをしただけならば何という事は無かったのだが、集団暴行事件へと発展した今回の乱闘は、補導対象としては軽くは無い内容となってることが警察の言葉から聞き取れる。



「もし、君の親が彼らを暴行事件で訴えたなら・・・刑事告訴して事件が起訴されたら、相手は未成年でも逮捕される。君たちは軽く考えているようだけど、過去の例としては治療費や弁償、慰謝料、告訴した場合は弁護士費用なんかも請求した場合もかなりあるしね。まあ、どちらにしても親が来て事情を説明してからの話だな。そしたら帰れるぞ」

「・・・・・」


だからいいかげん吐けと、初めは穏やかだった口調も段々厳しさがこもったものに変わる。それでもしゃべらない僕にとうとう呆れた警察官は、



「身元が判明しない君をこのまま返すわけにはいかないから、保護者が来るまではここで反省してもらうぞ」



と、「相談室」と書かれたプレートが下がる狭い個室に連れてこられた。
そこには格子が嵌められた小さな窓と、机とパイプ椅子があって、

まるで取調室のような部屋。


「しゃべる気になったらドアを開けて叫べ。通路のデスクにいる係の者が来る。言っとくけど勝手に抜け出すなよ」


逃げたら補導じゃなくて逮捕に切り替えるぞと、脅し文句を言って忙しそうに出て行った。

[←][→]

24/47ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!