捕獲したのは別団体
ナイトヘッドが仕掛けてくると同時に、僕たちは一斉に四方へ走り、相手が集中して来ないようにバラバラになった。
自分達に向かい突撃してくるエンペラーに虚を突かれた敵は、それぞれ僕達に一発ずつブチこまれていた。




それからはもう乱闘。殴ったら殴られ、蹴ったら蹴られ、人数的に不利なエンペラーは1人が3人ないし4人を相手にしている。

静は相手の顔面や首だけに狙いを集中し、少ない動きで確実に相手をダウンさせていく。3人倒したところでやられている仲間に加勢に向かう。
駆け寄ると倒れた仲間を3人がかりでリンチしているのが視界に映り、その時はもう暴力をふるう相手の後頭部に蹴りをくらわせていた。


「ぐわっ」

蹴られた男は前のめりに倒れ、隣にいる男にも着地と同時に顔面に拳をお見舞いしてやった。拳がガツッと鈍い音を立て違和感があったがそんな事は気にしていられなかった。


「しっかりして、大丈夫!」

血を流す仲間の肩を揺さぶると、目を開けて大丈夫だと答えたので安堵した。
しかし仲間に気を取られて油断したそのとき、かぶっていたフードを後ろから引っ張られ、その勢いで地面に背中から勢いよく倒れた。



「他人の心配とは余裕じゃねえか」
地面に引き倒した僕を見下ろし、野蛮な目つきで睨みつけてくる。

「さっきはよくもやってくれたな」
おそらく静に蹴られるか殴られるかされたのだろう。恨みのこもった声を漏らすと、男は静の手の包帯に視線を移し、躊躇無くその手に足を踏み下ろした。



「ぐっ、うあぅ・・」

靴の固いかかとで、グリグリとねじ込むように包帯の上を踏みつける。更に体重をかけて踏みしめ、アルファルトと靴の間で無残につぶされる。
体を翻し、右手で男の足を叩くが、体重を乗せている足は離れず、更にガシガシと打ちすえる。


「うあ、、ああーーっ」


皮膚が再び裂けるようなビリビリとした痛みと焼けつくような熱さが左手を支配する。包帯は土で汚れ、ずれて、ほどけ、手に絡まっている。負傷している左手を執拗に痛めつけられた。

「痛ぇか。痛えよなぁ〜」
笑いながら、ねじ込み上からガツンとかかとを落とし怪我をしている上から、手ひどく痛めつけ暴行を楽しんでいた。
左手の甲に肉がちぎれそうな痛みが襲う。
倒れた視線の先に、仲間も同じようにリンチを受けている姿が見えて・・・


このままじゃ、みんな・・・・・   やられる・・・・




抵抗もできずに、ただ地面に倒れることしかできない自分がふがいない・・・・・
  







ウゥーーーーーンウーーーーーー




大きな音が耳に飛び込んでくる。
ものすごく大きな音・・・・


何?


サイレン



サイレンの音だ。



けたたましいサイレンの音が聞こえると、今までリンチを楽しんでいた連中が慌てて静達から離れて駐車場の外に出ようと走り出した。
たくさんの足音、もめる怒鳴り声、何かが起きている。
痛む手を押さえて起き上ると、ケンタと他の2人も静にふらつきながら駆け寄って来た。

「みんな、大丈夫」
「はは、あれくらい屁でもねえ。な!」

ウインクして見せるケンタは口の端に青いあざを作ってニヤッと笑う。仲間たちも舐めときゃ治ると痛いだろうに虚勢を張っていた。




「おい、そこのお前ら」

駐車場に響き渡るドスの利いたような低い声に、顔を上げると・・・



け、


けけけげげげっげえっげ!




警官!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




懐中電灯を持った警察官がバタバタと走り寄ってきて、逃げ場のない僕たちはあっけなく取り囲まれ、有無を言わさず腕を掴まれた。



う・・うそ・・だろ・・・・・・・・



周りを見るとすでに掴まってパトカーに乗せられるナイトヘッドの面々。何人かは逃げたようだが、逃げ遅れた数人が警官に殺すぞおらぁと、悪態をつきながらパトカーに詰め込まれている。



「君達こいつらの仲間かい?」

警官の中でも比較的おっとり見える人が、怪我をしている僕達に話しかけてきた。


「違ぇし、仲間じゃねぇし。離しやがれ!」
「痛てぇんだよ、クソが!触んじゃねえ」
「てめえら、今度会ったらぶっ殺してやる」

仲間2人は、ナイトヘッドと同じように警官に悪態をつき、ケンタはパトカーに乗ったナイトヘッドに捨て台詞を吐いている。そうなんだ、こいつらは暴走族とか不良とか族なんだよな。
みんな静の周りではいい子ぶるので、たまにエンペラーのみんなを族と思わず、優しいお兄さんグループと勘違いしてしまいそうになる。



「そう、とにかく、詳しい話は署で聞きこう。はい乗って」





え、、、、、、、

え==========

=======え========================================




僕は痛みなど吹っ飛んだ。
血の気が下がり、
心拍数は上がり、。
背中に冷や汗がツーッと流れ落ちた。




「署って・・・・・」

震える声で聞き返す僕に、おっとりした警官はこう言った。




「うん、警察署」



天地がひっくり返った。

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あきゅろす。
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