夏休みのだいご味
ツルツルして、ひんやりした感触。いつものベッドと違う感触に違和感を感じ目を覚ますと、反対側のソファーで眠る天馬先輩と友成さんの姿が目に映る。



「?、、あ、そっか」
店のソファーで寝ちゃったんだ。狭いソファーで寝たせいか、体が軋む。立ち上がり思いっきり背伸びをした。

「あれ・・」

頭上で手を組んで伸びをした時、手に包帯が巻かれてあることに気づき、昨日の事を思い出した。

「ん、静、起きたのか」
あくびをしながら先輩たちも目を覚ます。
昨日は結局、メンバーの出入りが遅くまで続き、先輩たちも帰らずにみんなでソファーや床で雑魚寝になった。

「腹減ったな・・・」
天馬先輩の言葉に友成さんも賛同して、近くのファミレスに行くことになり、せわしく出勤するサラリーマンとは逆に、僕たちはのんびりと話しながら店に向かった。


「俺、朝食セットにカレーライスな」
「じゃあ、俺は和定食」
「僕はミックスパフェフルーツアラモード」
「はああああーーー??」
二人同時にあがる声。何か文句でも?と先輩たちを見返す。

「飯は?」
「あんまり朝は食欲無くて」

「何で朝からパフェなん。ムナクソワルイ、おえ〜」
「先輩下品です」

そして一番に運ばれてきたミックスパフェフルーツアラモードに丁寧に手話合わせていただきます〜とスプーンを差し込む。
まずは、上に乗ったデザートから食べ始める。指に着いたクリームをチュッチュッと舐めていると、指まで美味そう、俺も舐めてぇ〜と先輩が言う。

「そういう言い方やめませんか。オヤジくさいんですけど」
「お前が朝から女子高生チック漂わせるからだ」
「ほら、静、口にまだクリームついてる」

友成さんは指先で僕の口元のクリームをぬぐい取り、あろうことか指に着いたクリームを・・・舐めた。

「げ、」
「うん、ほんと、甘くておいしい」
「友成、てめぇ、クソッおい静、俺にもよこせ」

「変な事やらないでください・・・・それにこのパフェは僕のもんです」
何でこの人たちは朝からこんなにテンションが高いんだろう。低血圧な静は落ち着いてパフェが食べたかった。


先輩たちが食べ終わる頃、少し小腹がすいてきたので、サンドイッチでも食べようかなとメニューをめくる。
ここのサンドイッチって結構ボリュームがあって、カツとかハムの具があふれんばかり挟んである。
これはちょっとなーと迷い注文したのは、

「小倉あんの白玉団子ください」

天馬先輩はカレーを喉につまらし、急いで水を流し込みながらむせって、気色わりぃと漏らした。




おなかも膨れてやっと落ち着く。食後のコーヒーやジュースを飲みながら、ゆっくり流れる時間をたわいのない会話で過ごす。
先輩たちと過ごすこんな時間は僕は大好きだ。僕が知らないいろんなことを、いい事も悪いことも先輩たちは教えてくれる。

それから、10時になったところでゲームセンターに入り格闘ゲームやコインゲーム、カーレースで競争して朝っぱらからゲーセンという夏休みのだいご味を堪能しまくった。

友成さんはさっきから必死にUFOキャッチャーで何かを取ろうとしている。
ガラスに張り付いてみるとかわいいゴマフアザラシのリュックサックを狙っていた。
7回目のチャレンジでようやくフックがリュックのひもに引っかかり投入口へ滑り込んだ。

「よっしゃー!ゲット!!」
転がり出てきたかわいいふわふわの真っ白なゴマフアザラシの赤ちゃんリュック。

「はい、静後ろ向いて」

そして僕にアザラシリュックを背負わせて、ほら似合うと思ったーと自分をほめていた。

「・・・・・いらんです」
「いいじゃねえか、似合うからもらっとけ」
天馬先輩がリュックのチャックを開けて、財布とか入れてやるから出せと言うので、仕方なくあきらめて財布と携帯を渡そうとして携帯を見た。


そういえば、電源昨日の夜から切ったままだった。
携帯の電源を入れてから先輩に渡し、リュックに入れてもらうとすぐにブーブーとマナーモードが響く。


それに気づいた先輩がまたリュックから携帯を出してくれて、受け取った僕は誰だろう?と液晶画面を見た。

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あきゅろす。
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