遊び人ですか
ニットキャップを脱いで、眼鏡も取った。




洋服までは着替えられないので、どうしようかと思っていたら、由美お姉さんが、天さんのスーツを脱がせ、僕に羽織るように言った。


スーツを羽織ると、天さんの体がとても大きい事がよく分かる。

袖は長く完全に指先まで隠し、袖先15センチは余っている。
ポケットの位置が太ももで、スーツの裾は膝辺りまできていて、僕のハーフチノパンツを完全に隠した。





「いや〜ん。何だか静ちゃんエロイ〜わ〜〜」


女子高生が男物の大きなサイズのシャツを着てるのあるじゃない、あんな感じで超〜〜〜ロリ。萌だわ!!と由美お姉さんは1人で舞い上がっている。


恥ずかしいセリフを連発するお姉さんに、僕は耳まで真っ赤になった。



なんだよ、エロイって。なんだよ女子高生って。






男のスーツの上着を羽織った、ロリっぽい姿・・・・・・・・・・


このような姿なのは理由がある。




さっき追いかけっこをしたからだ。



ナイトヘッドの何人かは僕の顔を知っている。
もしかしたらまだこの辺りをうろついているかもしれない。

それで、少しでも変装できればと言う話になって、いろいろやってみた結果、現在のスーツを羽織る女の子風の姿に変装してのだ。






でも、まてよ・・・


ニットキャップと眼鏡取ったら・・・この顔は素顔なんですけど・・・
あ〜でも変装したしず姫スタイルに問題があるんだから、これでいいのか。





全身が映る姿見の鏡に映る自分の姿を見ていると、後ろに天さんが立って僕を見ている。



天さんって背が高いな。
それと、、、  カッコイイ。
なんか、、、、、、、、、、、、、不公平だ。



鏡に映る女の子な自分と、男らしい秀麗な顔立ちをして、体躯も立派な天さん。

鏡に映った天さんの視線と僕の視線が合うと、天さんはにっこり笑って、後ろから僕を抱きしめるように腕を前に回してきた。




「な、何、天さん」


振り返ることも、動くこともできず、力強い腕がギュッと僕を包む。

僕の耳元に唇を寄せて囁く天さん。

耳朶に触れる、温かい吐息にゾクゾクして戸惑う姿が、鏡に映し出されている。





「天(てん)じゃあ、ないんだな・・・名前」

「え、」


でもみんなが天(てん)さんって・・・

そんな疑問をぶつけると、クスッと笑う。

その吐息も、ゾクゾクするから、止めて欲しい。
鏡を見ると僕の顔は恥ずかしさで赤く色なっている。
天さんは、僕の耳元に目を閉じて顔をうずめているのが映っている。




まるで恋人同士が愛をささやき合っているようなこの構図・・・



だめだ、僕最近ヤバイ。




この構図が恋人同士だと想像するあたりが、もうまずい。
頭をリセットリセット!




鷹耶との、最近の妙な出来事の後。
学校で告白されたり、今日みたいな場面に出くわすと、鷹耶さんの言っていた言葉が思い出されて、違う相手なのに、なんだかすごく気まずい思いになる。

キモイ、ウザイ、頭おかしいんじゃあねえの病院に行け!と速攻でたたき返していた自分が懐かしい。

もちろん、変な奴に対しては今でも容赦なくすっぱりと切り捨てるが、真面目な態度で真剣に打ち明けてくる人達には、こちらも戸惑いながらやんわりと断るような対応に変化してしまっている。


川上たちは、相手が期待したり、勘違いしたりするからその態度はやめろ!と怒られたけど・・・・





天さんは別に僕に告白なんかしていないわけだけど、このシチュエーションが頂けない。
僕はこういうスキンシップは苦手なんだ。
鷹耶さんのせいで。恥ずかしくって、うまくかわせないし、どこまで本気かなんて、コミュニケーション能力や恋愛レベルの低い僕には、図ることはできない。





グルグル頭の中でああでも無い、こうでも無いと思考を巡らす僕の耳元で天さんは低い声で呟いた。





「あきら だ」


ホ、ホ、ホ・・・ホストってこんな感じですか======!!!
耳元でささやかれる、すんごい美声におののいて、ビクッと肩が揺れた。


ピッタリと僕に体をくっつけて、

「剣持 あきら」


言ってみてと、後ろから鏡に映る僕を見る。

「剣持さん・・」



「あきら」





「・・・・・あきら、さん」



名前を呼ぶと、ああ・・・それでいいと目を閉じて、僕の髪に唇を軽く押し当てた。






「ちょっと、天・・・あんたこそ何やってんのよ」


由美さんは腕組みをし眉を吊り上げて、仁王立ちだった。



「あんたがタラシなのは十分分かってるつもりだったけど、少年趣味まであるのは正直驚いたわ」

引っかけ回しているのは、女だけじゃなかったのねと呆れている。



「アホかお前は、んなわけ、あるか」

「じゃあ、そのいやらしい手を離しなさいよ」



体もね!と天さんにあっち行けと追い払うようなしぐさをした。

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