Second kiss
畳の上にあおむけに横たわり、四肢を投げ出している自分がいる。
その上に覆いかぶさる鷹耶さん。
「ちょ、ちょっと、鷹、にい、、、、なに、、」
鷹兄は僕の体をまたぎ肩を押さえつけ、もう一方の手は後頭部の後ろをつかんだ体制で覆いかぶさっている。
後ろに倒された時痛みを感じなかったのは、鷹兄の手が頭を支えていてくれたからだ。
頭上から声が落ちてくる。
「静の”好き”は、分かった」
押さえこまれた状態で、静はパニックになっているのに、冷静に話しかけてくる鷹兄に恐れを感じ始めた。
「な、ちょっと、、どいて、よ」
下から両手で鷹兄の胸をぐっと押し体を上にずらして逃げようとするが、更なる力で肩を押さえこまれ、顎を掴まれた。
「や、、この、、どけって、、!!」
「今度は俺の”好き”を 教えてやろう」
目を細めた鷹兄の顔がゆっくり落ちてくる。
欲望を秘めた目が、僕を捕らえて離さない。
怖いーーーーー
ゆっくりと恐怖が押し寄せてくる。
あがらえない力に、目をギュッと閉じた。
唇が重なる。
「、、 、ん、、」
拘束される体に痛みはないが、強制的に抑えられる力に恐怖を感じ、キスを受ける体がこわばる。
先ほどとは違い、鷹耶のキスは執拗でありそれが更なる戸惑いを生んだ。
角度を変えながら、キスの雨が降る。
さっきの音のないキスとは違い、チュッチュと音を立て、唇を優しくついばむ。
口を必死に結び、その止まぬ行為に耐えているとフッと上からかすかに笑う声がする。
「口を開けろ」
優しいけど、でも命令口調で言い放つ。何で口を開けないといけないんだよ。
目をギュッと閉じたまま顔を横にそむけ、口もしっかり結び言うことを聞かず、それでもまだ手で胸を押し上げ抵抗する静に鷹耶は呆れたようにフンと喉をならした。
耳に吐息がかかり、温かいぬめりを感じて体がゾクッとした。
耳たぶを舌で舐められ、チュッと吸われる。
「ぎゃ、、ち、、っつちお、、鷹、、に」
どこ舐めてんの、、、と、びっくりして静が非難の声を上げたとき、鷹耶はそれを見逃さず、静の口に舌を滑り込ませた。
「、んっ、つ、、んん、、」
唇と唇が密接に重なり、鷹耶の舌が静の口内を探る。
やわらかく熱い舌が自分の口の中でねぶるように動き回っている。
初めての深いキスの衝撃に、何もできずにただされるがままになっている。
怖い、と感じていた気持がだんだんとほぐされ、こわばっていた体からも自然と力が抜けていく。
鷹耶の胸をつっぱねて押さえていた両腕は次第に力を無くし体の横に落ちる。
「んぁ、はあ、」
口から漏れる自分の声が卑猥なものに聞こえ止めたいが止まらない。
鷹耶の熱い口付けに、自分の声を止めることもままならない。
僕の舌を、優しく何度も吸い上げる。
チュプンと音が続く。
力なく落ちていく舌をからめ捕り味わうように自分の口に導く。
体が熱い、背筋がぞくぞくする。
さっきまで恐怖で震えていた体が、与え続けられる甘く淫らな誘惑に今度は別の感覚が生まれ、その心地よさに体を震わす。
鷹耶が深く口内を刺激するたびに、体の芯が熱くなる。
自分の心と体の変化に追いつけず、戸惑うが頭の中もいっぱいいっぱいで何もかもがぐちゃぐちゃになった。
思う存分舌をからめていた鷹耶の口が、静の舌からそっと離れた。
はあ、はあ、と荒い息をしながら、キスの間ずっときつく閉じていた目を開くと、鷹耶の口から二人の唇をつなぐ銀色の糸が切れる瞬間が見えた。
舌舐めずりをして僕を見下ろす鷹兄。
満足そうな表情で、荒く息をつきながらキスの余韻にどっぷりとつかる僕の唇を指で愛しそうに撫でる。
「こういう意味だ」
”すき”の意味を解するのに、 少し時が必要だった。
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