チュウの味
テストも終わり開放感全開の桜ヶ丘高校。



良家の子息が通う学校だが、一般の男子生徒とそんなに変わったところはない。

常に彼女が居る川上や他校の女子生徒から人気の高いバスケ部の期待のエース足立は軽くわい談を始めた。


川上の話にあれ?彼女の名前がこの間の人と違うと思ったり、○○のとき感度がどうとかいう足立の話に○○ってなんだ?と思ったりしながら聞いていた。

○○ってなに?と井上に聞くと、静ちゃんにはまだ早いからと、ごまかされた。


「キスするときのアレさあ」

足立はグロスたっぷりの唇が気持ち悪いそうで、する前に拭けと主張している。
リップが濃すぎるのも舌つっこんだときに不味いとかなり不満だ。

「味も臭いもくせえ、メントールもくせえ、アレなえるわ」

最後の言葉はよく分からないが、キスって臭いのか?初めてのキスはレモンの味とか言うよな。
疑問に思った静は聞いてみることにした。


「キスって、どんな味がすんの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「大体どうやったら味とかわかるん?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


スパーンと表情を変えず聞いてくる静に、散々わい談を繰り広げていた2人は戸惑いを隠せずうろたえた。



「静ちゃんってキス経験なしなん」



そう言われて初めて恥ずかしい質問をしたことを後悔する。
おでことか頬とかには鷹耶にされたことがあるが、女の子とキスなんてしたことはもちろん無い。

「な、ないよ。あっ、あたり前だろ」

恥ずかしくて下を向く。

「静ちゃん乙女チック!よし、ここはお兄さんがチュウの味を教えてあげよう」

あ、もちろんフレンチキッスからね〜と静の顔をガシッとつかみ顔を近づけてくる。

「げ、あだ、、ち」

足立の顔が近づいてくる。唇と唇が触れ合う瞬間
・・・静は後ろにぐっと引かれた。



静の襟を引っ張って後ろに引かせた井上。
そして足立の口に手を当てて引きはがし、そのまま顔面を掴みアイアンクローに持ち込む川上。

「ぐえ==っ、いだい、マジ痛い」

必死になって川上の手をはがす足立。
もう〜冗談だってば〜とゼーゼー息をしながら顔をさする。

「てめーのは冗談が冗談にならねえ、ふざけんなクソが」

「今度やったら殺すよ足立。初めてはやっぱり好きな子としたいよね〜」

井上は笑いながら静に言い、その後足立の頭を教科書の角でぶっ叩いていた。

角はあんまりだ・・・井上の非道に足立が哀れに思えてきた。



「どうしても、興味があってしたいのなら」

不意に川上が話を戻す。

「俺が無料で実地訓練するけど」

 
「・・・謹んで辞退致しますけど」

川上君 お前もか!

この話はやめよう。うん。もう終わりにしよう。





ーーーーーー 


 
「朝川、廊下で誰かが呼んでるけど」

クラスメートに呼ばれて入り口を見ると、知らない人が僕を見ていた。


「静ちゃん知ってる人?」

「・・・記憶にはございませんです」

と、いうことは、おそらくアレだ。
入学当時は掃いて捨てるほどよってたかって来た人種。
「君が好きだ、つきあってくれ」って、アホな人種再登場。

静に色目を向けて近づいて来た輩は、3人の友人にことごとく排除されてきた。
ここ2ヶ月で大分虫が付かなくなったと思っていたが、災難は、忘れた頃にやってくる。

「あれ、1年じゃないね、2年?」

「よく教室まで来るよな。見え見えじゃん」

「って、どこ行くの静ちゃん!」


静は席を立ち呼んでいる生徒の方を向いた。


「呼ばれたみたいだから、行ってくる」

きょとんとして普通に言う静にあわてて3人が止めに入る。

「話って、あいつ絶対静ちゃんに告るつもりだって」

「まさか、男に告白なんてありえないでしょ」

ダメだこいつ。
まだ分かってねえ。
川上は今までを思い出せこれで何度目だよと言い聞かせる。


「だって、何か用事があるのかも知れないし」

「話さなくてもあいつの目を見れば分かるだろうが」

目を見る?

川上の言い分を聞いて、静は廊下の生徒の目を見つめた。
静に見つめられて生徒は顔を赤らめ、笑顔の表情を浮かべた。

「あ、笑った、ほら、いい人そうじゃん、行ってくるわ」


『『『 バカだわ こいつ 』』』


静の言葉に呆然とする。
のこのこ教室を出て、生徒に付いていく静を目で追う。


「純粋で無知な所もいいけど、あの学習能力のなさは何とかならないのかねぇ」

呆れた井上は2人にチラリと目をやると、川上が無言で教室から出て行った。




ーーーーーー


「ほらね、言ったとおりでしょう」


川上と共に戻ってきた静は、もう信じられない、キモイ、あいつ眼科に行けよなと、ぶつぶつ言いながら帰ってきた。
井上から何度も言ったでしょう、この耳は飾り物なの?とお説教をされた。

川上からもアホ子と呼ばれ、足立もやっぱりおバカさん再確認と笑われた。



ん?なんか、このパターン覚えがあるぞ???なんだったけ???


勉強以外は物覚えの非常によろしくない静は先日エンペラーのメンバーに言われたことなどすっかり忘れていたのだった。

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あきゅろす。
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