学生の本分
うとうと。
ゆらゆら。
この揺れが絶妙に気持ちいい。もうこのまま・・・ガゴン!
「・でっ・・」
静ちゃんはただ今眠り姫。
実力テストが終わり、昼食を摂った後、いつものメンバーと教室で雑談をしていたが、何をどこまで話したか記憶がない。
気持ちいい揺れに誘われ盛大な船を漕ぎ、とうとう額と机がガッチンコ!
「あは、でこ赤い」
「うる、 る・・ さい」
舌っ足らずでまだ半眼しか開かないの静は幼さがにじみ出てかわいい。
その様子を教室にいるクラスメイト達がチラチラと見ている。
机の横に掛けた鞄からゴゾゴゾとフェイスタオルを取り出し机の上に置く。
枕代わりにして顔を押しつけ再び寝ようとする。対机防御用タオルの登場である。
「なに?静ちゃん徹夜でテスト勉強したの?」
井上お母さんは机につっぷした静の髪の毛を指先でくるくる回していた。
さらさらで柔らかい猫毛の黒髪はとてもさわり心地がよい。静もそんな風にさわられるのは気持ちいいからさらに眠くなる。
「俺も完徹だぜ==歴史なんて山掛けて丸暗記しかねえよな」
徹夜してもいつもと変わらず元気あふれる足立は、今日から再開されるバスケ部の練習に燃え、いつにも増してテンションが高い。
「一極集中バカなとこは、足立らしいよね」
「げ、井上ちゃんそう言う言い方するか〜大体あのくそばばあがよぉ〜」
『くそばばあ』というのは足立家のお上品なお母様のことだ。
「50番以内に入らねえと部活停止とか言いやがってよ〜」
250人中の50番に入れば文句は言わないが、3年間の内1回でも順位が下がれば容赦なく部活をやめなければならないらしく、文武両道がモットーらしい。
「井上は毎日きちんと勉強してますって感じだよな」
「そんなにしてないよ」
「ホントに?」
「僕がガリ勉タイプに見える?」
本当にしてないと、すました顔で返事をする。大体テスト前に必死こいて勉強するなんて、無様なまねはしないよと、小馬鹿にした感じで足立と川上に言い渡す。
「しっかし、テストからようやく解放されたからなあ、帰りどっか寄ってくか」
「げ、、俺今日から部活あんぞ、何で今日行くんだよ」
「じゃあてめぇ、さぼればいいだろう」
「レギュラー取るのに休めるわけねえじゃんか!川上ちゃんいけず!!」
井上は鞄から雑誌を取り出し、店を探し始める。
静ちゃん甘いの好きだからケーキバイキングでも行く?とか、川上は俺甘いものしかない店はダメだかんなーとか、文句を言う足立を無視して2人で相談を始めた。
みんなの声が遠くに聞こえる。
そうだ、なにか話してたんだけど・・・
ムクリと顔を上げボーッとした静。
「徹夜・・・・・・・して・・にゃいよ・・・・」
潤んだ瞳で遠くを見つめながら、それだけ言うとまたコテンと眠ってしまった。
このタイミングでですか。
静ちゃん・・・ 随分前の会話にやっと追いついたんだね静ちゃん。
アル意味僕たちトリップ体験だよ。
「このおまぬけっぷり、癒されるよね〜」
「これってギャップ萌え」
「アホな子ほどかわいいよな」
普段あまり喜怒哀楽が少ないぶん、こんな静は貴重だ。
あんまり、そういう表情はするなよな。
自覚がないってのは困るんだよ・・・川上はまた仕事が増えるなと思い心の中でため息をついた。
ーーーーーーーー
1週間後、学年掲示板に実力テストの結果が張り出された。
入学以来初めての評価テスト。
この学園で自分がどの位置にいるのかが初めて分かる瞬間でもあり、順位の変動が大きくない2,3年生に比べると、1年の掲示板前は騒然としていた。
静たちは混雑を避けて、人が少し引き始めたところで結果を見に行った。
あちらこちらから、悲喜こもごもな悲鳴が聞こえる。
第一学年 250人中50位までが貼り出されていた。
《足立》・・・・35位
「やった===これで思いっきり部活ができる==クソババアめ、俺様の実力を思い知れ、ははっははははっははっは」
「ああもう声がうるさいよ筋肉バカ」(井上)
「足立にも脳みそがあったんだね」(静)
「裏口とか袖の下じゃあねえの」(川上)
《静》・・・・6位
「よっし、快適生活死守。20位以下だと奨学生首になっちゃうんだよね」
「そっか〜静ちゃん頑張ってるよね。ご褒美あげなくちゃ」(井上)
「ありゃ、ごめん静ちゃん、中身はおバカな子だと思ってた・・・」(足立)
「いや、日常的には十分アホな子だと思うぞ」(川上)
《川上》・・・・12位
「まあ、こんなもんかな」
「ふ〜ん・・・」(井上)
「授業中いつも漫画読んでるのに、なんで!!?」(静)
「徹夜仲間のくせに!!カンニングか、ずるい川上ちゃん」(足立)
《井上》・・・・1位
「ふっ・・・」
「えっ、怖っ」(静)
「勉強してないって言ったじゃん、嘘つき、お前Sだ、絶対S属性だろ!」(足立)
「うえ、、超腹黒っぺー」(川上)
[←][→]
[戻る]
無料HPエムペ!