守護神しず姫
急いでいたから、いつもとは違う商店街の抜け道を歩いていた。
ちょっと遅刻するかな〜でもまぁ、いっか。
もうすぐ細道を抜けようとするとき離れたところに数人の男達がたむろっていた。
立ち止まって男達の背を見る。
よく見えないが男達の足下に誰かが横たわっているように見えた。
足音に気を付けながら近づく。
「けっ、ざまあねえなぁ。おねんねするにはまだはええんだよ」
横たわる男は腹を蹴られ苦渋の表情を浮かべる。
「偉そうな口ききやがって、てめえらがでけえツラしていられるのも、今のうちだけだぜ」
ひどい・・・男達は5人で一人の男にリンチを加えている。横たわる男はもう抵抗できないようなのに、まだ痛めつけようとしている。
「俺たちナイトヘッドに楯突いて、タダですむと、 ぐふっ!! 」
男は言い終わる前にドサッと吹っ飛んだ。
ーーーーーー
多勢に無勢、なんかムカムカする。
偉そうにしゃべる男にも腹が立つ。
静は自然と歩みが早まり、気が付くと走り出していた。
その勢いのまましゃべる男の背中に向かってジャンピングキ==〜ック☆!
「ぐふっつ!」
全く後ろを警戒していなかった男は、静の蹴りで前面に吹っ飛んだ。
驚く男達はあっけにとられている。
仲間に蹴りを入れ、目の前に立っているのは、自分たちよりも小柄な・・・男?
「なあ、大丈夫?」
男達を無視して地面に横たわる男に近づくと、男は倒れたままうっすら目を見開いて静を見上げた。
「し・・・・姫?静姫!!!」
そう呼ばれるとなんかかゆい。
その呼び方やめてくんないかな〜。
あれ?僕のことをあのアホな名前で呼ぶということはあなたエンペラー関係者ですか?
「しず姫だと!」
ニヤニヤしたツラで男が近寄ってくる。
上から下までなめるように静を見る。
はっきり言って視線が気持ち悪い。
姫か〜なるほどこいつ女でもいけるんじゃあねえ?と卑下た笑いをこぼす。
「へ〜あんたが噂のしず姫か?」
「違う」
男の問に速攻で返答する。
「はあぁ!?、お前しず姫だろ、今更隠すつもりか」
「いや、隠すつもりはない」
「そいつがしず姫っていったじゃあねえか」
「だから、、、、微妙に違うって」
姫とかいらんし。キモイ。
「まあそんなのはどうだっていい、せっかくだからかわいがってやるよ」
「遠慮しときます」
怪我をした男は痛みをこらえてそのやりとりを聞いていたが、先ほど姫に蹴られた男が背中を痛がりながら起きあがり姫の背中に向かって地面を蹴る姿が視界に入った。
「しず姫っ、後ろ!!」
危ない!と思った瞬間。目を疑うような急展開に俺はただ呆然とその場面を見ているだけしかできなかった。
ーーーーーーー
俺の声に振り返ったしず姫は拳を振りかざす男のふところに一瞬で入り込み、軽く腕をつかみそのまま背負い投げをした。
地面に倒れた男のみぞおちに躊躇無く蹴りを入れる。
男達は仲間をやられて怒りながら向かってくるが、姫はヒラリヒラリと攻撃をかわす。
「こいつ、チョロチョロしやがって」
繰り出される拳を手のひらで受け流し、相手の手首をつかみ後ろ手に捻り、後頭部に手刀を決め気絶させる。
後ろから襲ってくる男達には顔に強烈な回し蹴りが炸裂する。
どの動きも無駄な動きがなく、蝶のように舞いなんと美しいことだろう。
強者揃いのエンペラーの幹部達の戦闘が「剛」ならばしず姫は「柔」。
仲間達が話していたことを思い出した。
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