身辺調査
「はい。申し訳ありません、お怒りはごもっともです。処罰は覚悟しております」



上司である  鷹耶の身辺調査


それは幹部内で密かに行われた。

組の情報屋を駆使して勘のいい鷹耶に気づかれないように行動するにはかなり骨が折れた。

初めは瀬名が中心となって調査をすると言出したが、鷹耶に知れたときの処罰を考えると、まだ若い瀬名よりも、年配者が責任を取るべきだと、秋月本人が主張し引き受けたのだ。

鷹耶はいつもの鉄扉面で忌々しそうに秋月を睨み、デスクの中から開封された封筒を一通取りだした。


「さすが我が社の情報屋だけあって、よく調べてある」

封筒には「古手川事務所」とかかれてあり、それを見た幹部達は、画策したことが全て露見していることを知り眉をひそめた。
封筒にある事務所名は秋月達が調査させた情報屋であった。
すでに鷹耶は中身に目を通しているだろう。


「調べたまではいいが、詰めが甘い。それを俺に奪われるようではな」

調べられていることに気づいた鷹耶が他の者を使って(おそらく組関係者)情報屋を拘束したのだろう。
3人とも表情を凍り付かせ憮然と構える己の支配者に視線を向ける。


やはりこの人は侮れない。

畏怖、そんな感情に支配される。

封筒の中から調査用紙と写真を数枚取り出す。
写真と封筒はデスクの横にあるシュレッダーに通し、ウィーンという音と共に消えた。
それから調査用紙を確認しながら何枚かをシュレッダーにかける。

自分たちがしたことは鷹耶の手によって粉々に粉砕された。



最後に残った一枚の用紙を半分に折って、鷹耶は秋月に投げてわたした。

驚く秋月。
折られたままの用紙を受け取る。



「これ以上、俺のプライベートに口を出すな。次は無いと思え」

鷹耶はイスから立ち、社長室につながる隣の応接室に消えた。




一人ソファーにどさっと腰を下ろし、靴を履いたままの両足を組んで磨かれたガラスのテーブルにガツンと乗せる。
背広からたばこを出し火を付けくゆらせる。

誰もいない空間を恐ろしい眼力で睨みつける。
こんな鷹耶を見たら恐ろしくて逃げ出してしまうだろう。



この一月、自分のあからさまな行動に幹部が不信感を持っていること、そしておそらく調べられるだろうと思っていた。


倫子が消え、これからは静といくらでも会える。

実際4月に入ってからは毎週食事に誘い、迷惑がる静を2度もホテルに泊まらせた。
本当はすぐにでも一緒に住みたいくらいだ。
だがそうなってくると静という存在が周りに良い意味でも悪い意味でも知られることになる。
静はまだ高校生になったばかりだ。
自分が側にいれば否が応でも曝される。




俺だけの静。



その愛らしい姿、声。



今までも、これからも、何者にも汚されず自分の手の内に包んで隠しておきた・・・




だが、自分が静の側にいれば、それだけ静のリスクも高まる。
西脇達が危惧していたように、自分だけならともかく、静の身も守りきることができるのか。



静は何者も恐れない鷹耶の唯一の弱点。



静の身の安全と、自分の我を何度秤にかけたことか。

それでも会いたい。


静と共にありたい。

 
 そのためにはもっと強大な力を、何者にも支配されず敵対する者を完膚無きまで叩きつぶせるほどの力を手に入れなければ。



ーーー静を守るーーー



そのためにこの10年間を費やしてきた。

海藤家、組織、そして今もなお奢ることなく更なる力を手にしようと貪欲に求め続ける。

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