偏食
デラックス小岩井ミルク入り夕張メロンパン、イチゴ果肉入りチョコホイップロールケーキ、骨太牛乳、リンゴ100%ジュース、カスタードプリン。



「へへへ〜いただきまーす」


うれしそうにメロンパンからほおばる。


「何その・・甘味なメニューは」

「へ?これ?うまいよ」

小さめのパン2個に牛乳とジュース。
それ相当の物をおごらせると言っていたのに、朝ご飯じゃあ有るまいしパンだけか?



「ねえ、静ちゃん、それ好きなの?」

井上が心配そうに聞く。

「うん、このメロンパンさ小岩井ミルクってのが生地に練り込んでて、だからかな〜230円もするんだよ。こっちのはイチゴの果肉が大きくて・・・」

つまりは普段食べているパンよりワンランク上の美味しいパンなんだ!と言いたいらしい。「牛乳はあんまり好きじゃあないんだけどね〜」と。
その先は言わないが、好きでもない牛乳を飲んでいる理由が足立達には分かってきたからあえて聞き返さなかった。


カスタードプリンを完食。
甘い物だけ食べている静に周りはげっそりした。

「こっちの袋は?」

もう一つの袋が気になって川上はヒョイッと袋を取り上げ中身を見た。
”ホテル食パン6枚切り”
桜ヶ丘は寮もあるので食パンやジャムなども購買で売られている。

「ああ、それね、もっと買っていいって足立が言うからお土産。夜食べようと思って」


夜って、夕飯もパンか?


「静ちゃんってご飯食べてるの?」

「うん」

「三食ちゃんと?」

「あー、朝は食べると気持ち悪くなる」

 昼は学校で食べるとして・・・まあ、いつもパンだけど。

「夜は?」
「食べてるよ」

「ご飯食べてる?」
「昨日はカレー食べたよ」

「おとといは?」
「・・・・・・・・・パン・・・」

「・・・・まともなもの食えよ。おめえは・・・・」


46キロの原因、こいつパンばっかり、っていうかパンしか食ってないんじゃあないか!


「お米は?みそ汁は?」


そう言えば炊飯器まだ段ボールから出してなかったなぁ。でもお米を買うのも面倒だな、重いし。


「親、作ってくれないの?・・・」

井上達の顔がすごく心配そう。
まずい、一人暮らしがばれる!!

「たべ、食べてるよ!ちゃんと作ってもらってるよ!おっ、親も忙しいさ、それに僕パンの方がが好きで、でも、ちゃんとご飯食べてるよ。いろいろと。」

うん、嘘は言ってない。
本当にご飯よりパンが好きだし、保護者の仕事は忙しいし、鷹耶さんがいろんなおいしい珍しい物食べに連れて行ってくれるし。


「そうか、なら、いいけど」

「もっとちゃんと食べろ、パンばっかり食ってると栄養不足で病気になるぞ」

「でもパンってバターとか結構使ってて、脂肪分有るんだよな。なのに太らないのは」

川上と足立は顔を見合わせて、

「「やっぱ。虫飼ってる!!」」

「んなもん、飼ってないし!」

「静ちゃん、口の中の物飛んでる、あと2人とも食事の最中に気持ち悪いこと言わない」

手厳しくお上品な井上様にしかられる。
僕たち3人を手厳しくしかる井上はまるでお母さんのようだ。



みんなから食生活の心配をされて、この間も鷹耶から「ちゃんと食べているのか」と聞かれたことを思い出す。
倫子さんが居たときはさすがに夕飯はパンでは無かった。でも買った物が多かったかな〜食事が大幅に偏ったのはここひと月だ。だって料理めんどくさいし、パン好きだから飽きないし。


小さい頃祖父は好き嫌いを許さなかった。
体が小さくて風邪を引きやすかったから何でも食べて強い体になるようにといつも口癖のように言っていた。

その反動からか、倫子さんとの生活では好きな物ばかりで食生活が変わった。
倫子さんはこだわらなかったので好きな物を食べさせてくれた。
そしてその結果が、パン、ファーストフード、ケーキ、プリン、牛乳とリンゴジュース中心の食事である。
これで太らないのだから女の子が聞いたらうらやましがるだろう。


リミッター解除!自由万歳!!


ぼくのフリーダムな高校生活はすばらしいスタートダッシュで始まった。


しかしその偏った食生活を変える気もない静は、後々いろいろと後悔することになる。

[←][→]

19/43ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!