自由行動は制裁の後で(3)
鷹耶は社長としても、組長としても十分過ぎるほどにその力と能力を発揮してきた。




まだ26才の若さで、刃向かう他者は圧倒的にねじ伏せ、身内に畏怖の念さえ抱かせる。鷹耶を侮って手を出してきた者に対しては一切の容赦をせず完膚無きまでにたたきつぶしてきた。

 
鷹耶のプライベートはかなりオープンで、学生の頃からの女性関係は数知れず、隠し子の1人や2人名乗り出てきてもおかしくはないくらいの派手な付き合い方をしていた。下手なもめ事が起きないように瀬名や秋月は鷹耶の女性関係は全て把握しているつもりだったし、西脇もしつこく迫る女や、勘違いをして結婚を迫る女を体よく排除してきた。

鷹耶の関係の持ち方は幅が広く時には興味本意で男と関係を持つこともあったが、この世界では男娼もそう珍しくない。酔狂な遊びのひとつだ。
長く続いて2ヶ月程度。付き合い方を割り切っている相手をうまく選び、性欲処理をしているような状態だった。


特定の人物は作らない。

瀬名達幹部はそう思っていた。



無骨な梶原が瀬名と西脇に漏らした今日の鷹耶電話の様子。
聞いたことのない、穏やかな声。



何事においても隙を見せない完璧な男。
そんな鷹耶が、時々無理に予定を変更したり、仕事を無視して消えたり、側近達が頭を痛める行動をとるときがある。
 
それは鷹耶が本格的に皇神会の仕事に足を踏み入れた4年前から、月に数回あることだったが、多忙すぎる仕事の憂さ晴らしも時には必要だと思い、瀬名は仕方がないと目をつぶっていた。



しかしそんな悠長なことを言っている場合ではなくなった。

今日のような状況の時に、制裁の途中で組長が不在となり、いつものごとくボディーガードも連れず行方をくらまし、側近達は誰1人事情を把握できない。有事の際、判断を仰ぐべき組長がいませんでは通用しない。


今まで野放しにしすぎたか。
 
 
社長のあの焦り様。無惨な暴行を与えたと思ったら、すぐさま梶原に丸投げして何事もなかったかのように出て行く始末。

全てを放り出して出て行ってしまうような今日の奇行。

 
「やはり調べる必要がありますね」

「そうだな。だが黙って調べたことが知れれば・・・あいつのことだ、たたでは済まさないと思うぞ」

俺は嫌だぞとでも言うように、西脇は首を横に振る。

「そうでしょうね。でも誰かがやらなければならないでしょう」

上司の素行調査など、ばれたら即座に殺されそうだ。側近の瀬名といえども例外ではないだろう。
鷹耶は身内にも容赦はしない。



「困ったな〜。さらっと聞いてみるのはどうだ?」

「社長が話すと思いますか」

「機嫌がよければ口を滑らせるかも知れん」

「あの方に機嫌がいいときがありますかね」

いい加減なことを言う西脇に視線をやり「じゃあ、あなたが聞いてくださいと言い返す。

「俺は体を使うのが仕事だ、頭は瀬名が使ってくれ」

顎をしゃくりながら自分は肉体派だといい訳をする。


「帰ってきたら機嫌がいいんじゃないか?」

きっと今から数時間、電話の相手とお楽しみの時間を過ごすであろう会長を想像した。

「帰ってきたら、楽しい制裁の時間ですけれどね」

「・・・そんな予定がまだ残っていたなあ。どうせなら終わらせて行けよ〜」

制裁を終わらせてから自由時間。できればそうしてほしかった。


「服、汚したくなかったんですよ。きっと。」



今日はまだ長い・・・そんなことを考えながら、2人の幹部は組事務所にげっそりしながら戻って行った。

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