自由行動は制裁の後で(2)
3時間後。



逃走していた三納組のチンピラが3人、八城組に引き渡された。
地下室に引きずり下ろされた連中はすでに三納組による制裁を受け、まともに動ける者は誰1人いなかった。


ギギギィ。


防音性の黒く重い扉が開く。
まず鷹耶が中に入りその後を西脇と瀬名が続く。


部屋には湿気がこもり、コンクリートの床には所々赤黒いシミがこびりついている。

すでに体中に傷を負ったチンピラの髪を、梶原は乱暴にわしづかみ上を向かせた。両腕を後ろに拘束され、口はガムテープでふさがれている。

男達は入ってきた鷹耶達を見て、震えながら声にならないうめき声を出した。

カツン・・・


固く冷たい音を立てながらゆっくり鷹耶が男達に近づく。まるで汚いゴミでも見るような目つきで見下ろされ、男達は恐怖に体が震えた。


「随分とおもしろいことをやってくれたな」

冷然と言い放つ。


「覚悟はできているんだろうな」


ククッと口の端を歪ませて笑い、目の前に座らされた男の顔面に躊躇無く蹴りを入れた。



蹴られた男は後ろに吹っ飛びコンクリートの壁に激突し、後頭部と鼻から血を流した。
口を塞いでいたテープは口の中まで食い込み破れ、前歯が数本折れ更に血を滴らせた。
男は失神したが、鷹耶はなお蹴りを入れ男の顔に靴のかかとををめり込ませた。


「おい、寝てんじゃねえぞ」


失神した男の鼻の辺りがベキッと奇妙な音を立てる。
仲間が暴行される姿を見ていた2人のチンピラは容赦のない暴行に血の気が下がりガタガタ震えた。

表情も変えず、痛みを与えることを楽しんでいるようにさえ見える組長の様子に、身内の組員でさえフリーズする。

「梶原」

「はい、組長」


後は勝手にしろとばかりに、めり込ませていた足を下ろし出口に向かって歩き出した。
男は泡を吹きながら壊れた人形のようにするすると床に崩れ落ちた。
出口の思い扉をくぐるとき、ふと思い出したように告げる。


「ああ、まだ殺すなよ」


それは男達にとっての死刑宣告。これから数時間に渡ってボロボロの体に更にリンチを加えられるのだ。
死んだ方がマシなほどの、恐ろしい暴力が続けられるのだ。




階段を上がり無言で組事務所を出ようとする鷹耶を瀬名が呼び止めた。

「会長、今からどちらへ」

制裁の途中で場を離れる鷹耶を問いつめるが、歩みを止めることなく鷹耶はそれを聞き流す。


「今日中には戻る。西脇、お前も付いてくるな」

玄関の自動ドアが開くとその前にはBMWがすでに横付けされていた。若い組員が車のドアを開け、鷹耶は素早く乗り込む。

瀬名はあわてて車に駆け寄った。

「会長、今出かけられては困ります」

「今日しなければならないことは全てした。後に回せることは明日やる」

そう告げると勢いよくドアを閉めてエンジンをかけ車は発進した。


呆然と見送る西脇。
肩を落としため息をつく瀬名。



「朝からイライラしていると感じてはいたんだが」

西脇は頭をかきながら夕暮れに消えていく車を目線で追った。


「途中で出て行くとは思わなかったな。原因は・・・梶原が言ってたあの昼間の電話か?」

「それしか思いあたりません。以前も途中で仕事を切り上げてお出かけになることが何度かありましたから」

瀬名は消えた車の方を睨みながらため息をついた。



「まあ、今日中に帰ると断言しましたからね。言ったことは実行される方ですからそのうち戻って来られるでしょうが」

ボディーガードの西脇くらい付けてほしいものですと、瀬名は愚痴った。


きっと鷹耶はかなり苛立っていたのだろう。
あの連中への報復を見ていた者達は、容赦のない暴行に久々の組長らしさを垣間見て、フリーズすると同時に更に鷹耶に心酔した者もいただろう。



だが怒りの原因をなんとなくではあるが知った瀬名と西脇から見ればアレはただの八つ当たりである。



久々の楽しいデート?であろう時間をつぶしやがってタダですむと思ってんのかこのクソ三下どもが!!と・・・社長は思っていたに違いない。と・・・

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