こいつの思考回路がわからん
「!!!」
いきなりの動作に驚きビクッと体がすくむ。その反応を楽しそうに園田は静を上から見下ろして言った。
「話せて楽しかったよ。じゃあ、また放課後」
頬に添えた手を名残惜しそうにゆっくり放し、そう言って園田先輩は教室から出て行った。
「静」
上から降ってきた川上の声に顔を上げると怒った形相で俺を見ている。
「あ、制服ありがと。着替えないとね」
にっこりお礼を言ったのに、まだ怒った顔をしている。
「お前は・・アホか===============っ」
そういって川上は僕の胸倉を掴みあげた。あと数センチで顔がくっつきそうなところで怒鳴られて唾がばっちり顔にかかる。
「か・・・川上・・つばきちゃないって」
何をこんなに怒っているのか分からず愛想笑いを作ってみるが、それさえも気に入らないらしい。
「お前は、誰にでもノコノコ付いて行くんじゃねえ」
「でも、園田先輩は一応知ってる人で」
まだ言うかこいつは。知り合いなら誰でも信じてついて行くのか。相手が何を考えているのかまだ分かってないのか。のんきに顔なんか触らせやがって。俺が来る前に何もなかっただろうなあああ!
川上は静のおバカ加減に怒り心頭だが、それでも呆けている静の表情に一気に力が抜けて、シャツを掴んでいた手を放した。
「あいつに、何もされなかったか」
「あ〜・・・うん」
「なにかされたのか!」
歯切れの悪い返事に、2人きりの時間に何かあったことを察した。
「あのやろう」
「べ、別に・・・何もされてないって。包帯替えてくれたし、いい人・・・」
そこで静の言葉が止まる。
いい人・・・?いや、いい人ではないかもしれない・・・・・アレ発言があったわけだし。
一人でうだうだ考えていると川上がどうせ告白されたんだろうと睨んで言う。
そ・・・その通りです。いつものやつです。
口の端をピクピク引きつらせて固まった僕に盛大にため息をつく。
「で、うまく断ったんだろうな。後腐れそうなこと言ってねえだろうなぁ」
「あーーーそれについては」
「なんだ!まだ何かあるのか」
そんなに怒って言い返さなくても・・・胸の前で両手の指をクニクニ合わせてなんと答えようかと思案するが、いい考えなど思い浮かぶわけもなくそのまま答えた。
「結果的に言うとね・・・友達になった感じかな」
「はああ??なんじゃそりゃあ」
告白されたらスパッと断り、気持ちを引きずらせないようにさせる。もしくはやんわり断って事を荒立てないようにする。これが3人に教えられたアレ発言の対策だ。
「じゃあ、断らなかったのか?」
「ことわ・・・」
?・・・・・ちゃんと断ったっけ?
話したことを思い出しながら、確か話がだんだん違う方向にそれて・・・
「そうだ!付き合ってみるとか、そんな話になって」
「まさか静、お前“はい”とか言ったんじゃないだろうなあ」
「まさか!言うわけないじゃん」
「じゃあなんではっきり断らねぇんだ」
「だから、」
そう、口車に乗せられて、“友達から”なんてことになったのだ。
やっぱりアホだ。こいつの思考回路がわからん・・・その話を聞いた川上は呆れて次の言葉が見つからず、とりあえずもうあいつとは会うなと忠告された。
「あのね・・・・・・・・・・・放課後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・会うんだけど。係で・・・」
川上の目がつり上がった。そういえば園田がそんな捨て台詞を残して去っていったことを思い出し、舌打ちをした。
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