つぎに、浴室での攻防(2)
「じゃあ、次は腕を」



そう言うと鷹兄は僕の前にやってきて、濡れることも構わずに片膝をついた。

やっとくすぐったさから解放されて、ホッとする。まだ体はゾワゾワするけど。

「ちゃんと食べているのか。折れそうな細腕だな」

僕の白くてなまっちょろい細身の腕を、鷹兄の大きな手が掴む。さっきのゾワゾワ感が残っていて、触られたとき腕がビクッと震えた。それを感じ取ったのか、掴んだ手の力を緩めて、安心させるように掴んだ場所を優しく握り直す。

(「こういうところは・・・・嫌いじゃないんだけどな」)

ビニールを巻いた方の腕を取って首筋から肩、二の腕を降りてゴムを巻いた所までを気をつけながら洗ってくれた。反対の腕も同じように洗うんだけど、拳のところに怪我をしているから、手のひらと指はスポンジじゃなくて直に指で洗う。
石鹸で滑る鷹兄の指が僕の指を一本一本洗うけど、ヌルヌルとした感触が上下するさまってなんだかとても恥ずかしい。
・・・それにその顔・・・
だから、人の体洗うのに嬉しそうに口角上げた表情もやめて・・・更にいじわるそうに見えて・・・怖いってば。

「足、延ばせ」
「足も?」
「腕の次は、足だろう」
「スポンジちょうだい、自分でする」
「さっき洗っていいと言ったが」
「・・・さっきはね」

さっきは笑い死ぬかと思ったからさ。スポンジ貸してと手を伸ばすと、そんな僕のことなんて無視して、いきなり足首を掴んできた。




「うわ!なにすんの。う・・うひゃっ!」

足・・・足の・・裏も・・・さわんないで・・・。脇と足の裏は・・・不可侵ですってば!

鷹兄は僕の足首を掴むと、そのまま間髪をいれず足の裏をゴシゴシと洗い出した。
そして足の指の間はさっきと同じように指でこする。親指から順番に指の腹で撫でるように洗い、指の間に滑り落ちてこすり上げるときは、もう、悶絶!!笑って死ねるよ多分・・・

「ふきゃ!!きゃっ指、さわんない、で、、し、死ぬ、もう死ぬ!」
「これくらいで人は死なん」
「し、僕は・・ひゃっ、、、くっ!!ぼく・・は、し・・・死ぬの!!」
「おもしろいな」
「お・おもし・・ろく、、な、、ひゃっっ、、ぷ、くく、、も、だめ」

結構死にもの狂いで足をバタバタしたんだけど、全然動かせなくて、拷問のような洗い方に笑いすぎて頭が痛くなってきた。反対の足の指も同じように散々な目にあわされ、その間中僕は笑いと涙が止まらず、鷹兄は終始ご機嫌で面白がった。



「ふひぃーひぃー・・・・・・」



笑いすぎて痛む頭を片手で押えて、肩で息をしながら呼吸を整えている僕。
相反するように落ち着き払って、脱力する僕の足を洗っている鷹兄。

タオルがかぶる太ももぎりぎりまで洗い終えると、股の間にスポンジが下りてきたので驚愕!!とっさに鷹兄のスポンジを持つ手を押えこんだ。

こ・・この人どこまで洗う気!!!!

タオルの下の隠された部分にまで侵入してきた鷹耶の手を必死に抑えて、顔を紅潮させて言った。


「もう、ほんとに、いいから。これ以上したら本気で怒るから!!」


広い浴室に響く声で、いくらなんでもこれ以上は許せないと、必死になって叫んだ。脇だの足の裏だの、ウィークポイントを責められて散々好き勝手されたんだ。これ以上変な事されてたまるもんか。





絶対させないんだから!怒って睨みつけてやった。





艶やかなに濡れた髪で、

かわいらしい顔を薄紅色に染め上げて、

艶めかしい白い肌は泡でつつまれて一層輝いているというのに、

この子はその姿でどんなに睨んでも

煽っているだけだと分からないのだろうな・・・





鷹耶の口角は一層引き上がった。

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あきゅろす。
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