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きみのとなり
あまくあたたかく







「…ん……」




鳥のさえずりと、ほのかに香る甘い匂いに目が覚めた。


ゆっくり起き上がるとそこは昨日と同じ場所、翔さんのお家。



よかった。
夢じゃなくて、



まだ上手く実感できないけど、少しくすぐったいような不思議な感覚。

信じられない、だけど信じたい。




「あ、起きたんだね。おはよう、」


「…おはよう、ございます」


「ははっ、そんなかしこまらなくてもいいのに」




翔さんはそう言って苦笑いを零す。
だけど僕は首を横に振った。

これは僕なりの感謝のしるしだから、



翔さんは僕の考えてることがわかったのか、諦めたように笑うとふわりと僕の頭を撫でた。




すごく心地いい。
あったかくて安心する。

僕は翔さんに頭を撫でられるのが好き、大切にされてるのがわかる。
僕には勿体ないくらい、優しく大切に。




「そうだ、ココアでも飲む?」


「…ここあ…?」


「体があったまるよ、」




そう言って翔さんはマグカップを僕に渡した。

受け取ったマグカップはじんわりと温かかった、

少しだけ涙が出そうになったけど、僕は我慢して小さく頭を下げた。




「熱いから火傷しないようにね、」


「は、い」




こくり、と一口飲むとそれはちょうどいい温かさと甘さで、さっき香った匂いはこれだったことに気付いた。


本当に体の芯から温まるよう。




「…よかった、」


「…?」


「やっとクロハ笑ってくれた、」


「…あ、…」




そう言われて初めて、自分が笑みを浮かべていることに気付いた。


正直、僕は笑い方を忘れていたんだ。
泣いてばかりで、僕には笑うことさえ許されない気がしてたから。


でも、翔さんはそんな僕に自然と笑顔を取り戻させてくれた。




「クロハは笑顔の方がいいよ。」




翔さんはそう言うと、嬉しそうに笑みを深めた。










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あきゅろす。
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