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きみのとなり
おとをたててわれた







翔さんは慣れた手つきでオムライスというものを作ってくれた。


初めてみたオムライスに戸惑ったけど、一口食べるとすごく美味しかった。


ふわふわの卵と少し酸味のあるトマトソースが抜群で、
でも何よりも翔さんが作ってくれたから、こんなにも美味しく感じるんだと思う。



食べ終わって、僕はお皿洗いを始める。


翔さんは手伝おうか?って言ってくれたけど、大丈夫ですと返した。




「そう?ありがとう、」




翔さんはにこりと笑うと、ソファーに座りテレビの電源をつけた。


画面越しに聞こえる人の話す声、最初は怖かったけど今は大分慣れた。
賑やかに騒ぐ声はとても楽しそうだ。


お皿を洗いながら僕は、少しだけ耳を傾けていた。


分からない言葉も多くて、会話の理解はあまり出来ないけど、ふいに聞こえた言葉に体中が震えた。




「お前、きもちわりーなっ!!」


「…っ…」




大きく脈を打つ心臓。
頭の中が真っ白になる。


あの時のことを思い出す。
”キモチワルイ”


体が震える、手が震える。



持っていたお皿は床へと落ちた。



ガシャンッ、頭に響く大きな音。
僕の足元でガラスの破片が飛び散る。




「!?クロハ!?」




翔さんの驚いた声。




「大丈夫!?…クロハ…?」




”キモチワルイ”
そうだった。
忘れていた。
僕はキモチワルイんだ。


幸せになる権利なんかない。




「クロハ?クロハ!」


「!…かけ、るさん…」




翔さんの声で我に返った。
と同時に恐怖した。


翔さんの口から、
その言葉を突き付けられるんじゃないか、と。



どくどく、と早い脈拍。
身震いがする。



怖い……。

泉のように湧き出す恐怖心に、弱い僕は堪えられなかった。










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