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BL小説
蛍籠 #4
何で和成と利香が一緒にいる?でも利香の隣にもう一人だれか居るのに気が付いた。

「あっ、利津!」
「誰だよりかちゃん…」
「私の双子の弟、利津」

利香は隣にいる男と会話していた。和成はそれを見て呆然と立ち尽くす。

「そ、そう、ねぇりかちゃんそろそろ行こうよ…」
「う、うんそうね、じゃ、和成くん、利津」

利香は俺に謝るようにウインクすると、隣の男と腕を組み大通りの方へ歩いて行ってしまった。



しばらくの間沈黙が続く。

最悪だ。
何もかも。

「利津…知ってたのか」
「和成」
「知ってて、俺が利香ちゃんの事好きなの見て、それで笑ってたのかよ!」
「知らない、知らなかったんだ!利香に彼氏がいるなんて……知ってたら…和成に言うよ」

分かるよ、和成。
失恋した時のその痛みは。
誰かにあたりたくなるくらい、辛い、苦しい、俺も知ってるから、分かるんだ。

俺にあたろうとした和成は、しばらく押し黙った後うつむいて一言ごめんなと言った。


「……和成」

口元が震える。
でも、言うんだ。

「俺…お前に今のままじゃ何もしてやれない」

目を閉じたい、現実を見たくなかった、でも、逃げてはいけない。和成をじっと見て、続ける。

「…和成、利香を抱きたかったんだろう」

和成が顔をあげ、何かを言いかけた、がその前に俺は話しだす。

「………俺じゃ、駄目?」
「り…」
「分かってるよ、俺は男だし、でも、利香の代わりにもならないの?」
「…でも、そんな……」
「身体とか違うけど…俺を代わりにしてよ、和成」

和成の胸元のシャツを掴み顔を見上げる。
すると一気に目の前が暗くなり、唇に柔らかい感覚が降り注ぐ。

「…っこれよりもっと酷いこともされんだぞ!?お前分かって…」
「うん…いいよ、和成なら何でも…」

久しぶりにまともに顔を見て話せた。それだけでも嬉しくてしょうがないのに、好きな人とキス出来たのだ。これ以上幸せなこと、今は考えられない。
例え思いが伝わっていなくても、好き同士じゃなくても良い。
利香を思うのと同等の分だけ、和成の頭を支配する関係に成れれば、それで良かった。

「……っ利津!」

しばらく見つめ合った後、和成に抱きすくめられる。
大きな肩幅の中は心地よくて、さっきまで触れただけでのぼせていた大きな背中に手を回す。

「本当に…」

耳元に口を近付けて和成は最後の質問をしてきた。

「…本当にいいのか?」

耳に当たる吐息、潜めた低い声に爪先から全身にゾクゾクと鋭い何かが走る。

「…うん」

指先に力を入れた瞬間、和成の唇が俺の耳に触れた。

「やっ…」

耳の上を歯で軽く甘噛みされて、耳たぶまで下りていき唇で挟み、最後は舌で中を舐められる。
味わったことのない感触に悶え、歯を食い縛った。

「ん…んん…!」
「ここじゃ恥ずかしいよな…どこか…」

和成が身体を引き離そうとする。
俺はしがみついて甘えるようにせがんだ。

「ここでいいから…早く…やめないで……」

今和成と離れたくない。
こんな不安なまま、放っておかれたくない。
すると和成はベンチの後ろの茂みへ俺を引っ張って行った。

「…自分の言ったことに、責任持てよ」
「かずなり…良いから…」

全部言い終わる前に俺は和成に草の中へ押し倒された。と思うと、今度はシャツを鎖骨の所まで捲り上げられる。
肌の上を滑るようになぞられて、和成の手の温度がいやと言うほど伝わってきた。

「かず…っン」

思わず出た言葉を唇で塞がれる。それもさっきのキスとは違い、あいた隙間からぬるっとした感触が滑り込んできた。
突然舌が入ってきて困惑している間に、口内をぐるりとかき回される。
は、と息をつくと、目の端から涙がこぼれ落ちた。



初めて好きになった人との

初めてのキス

なのに、どうしてこんなに胸が痛いんだろう。



ただ

好きなだけなのに。








「お帰り利津」
「……」
「何よまだ怒ってるの?」
「…んなよ」
「そりゃぁ言ってなかった私が悪いし…でも突然だったじゃない、ねぇ」
「話しかけんなって言ってんだよ!!」

利香が、驚いた拍子に後退る。

「な…何、そんな怒ってんの?」


ごめん、
今は
利香の顔見たくない。


「利津ぅ…」


泣きそうな声で利香は俺の名を呼ぶ。

こっちが

こっちが泣きそうだ。



和成

かずなり和成和成



和成は、

暗闇の中ずっと

俺を


『利香』

と、呼んでいた。

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